多文化理解実習(台湾)の報告(2) 屏東:「原住民」の人たちの交流

 ポルトガル船によって「発見」される以前から、台湾にはそこに暮らす人たちがいました。現地では「原住民」と呼ばれている人たちです。台湾の人口に占める割合はわずか数%ですが、16の民族が「原住民族」として現地の政府に認定されています。

 

山地門はかなり標高の高い場所にあります。

 私たちは、台南から台湾鉄路(在来線)を使ってさらに南下して屏東に向かいました。屏東県は台湾の最南端に位置しているため、台北から屏東まで台湾を北から南まで縦断したことになります。私たちが目指したのは、屏東県の山地門にある国立施設「台湾原住民族文化園区」です。ここでは、パイワン族(排湾族)、ブヌン族(布農族)、アミ族(阿美族)のスタッフの方や大学生の皆さんが、私たちを出迎えてくださいました。

台湾の「原住民族」の歴史、文化や習俗を紹介した施設の参観や、さまざまな体験活動を通じて、台湾社会には多様なエスニック・グループが共存していることを知り、それぞれの文化的特徴についても学ぶことができました。とくに台湾の先住者である「原住民」の視点からの歴史の語りは、たいへん刺激的であり、多くのことを考える機会となりました。

「原住民」の視点から歴史を語ってくださったパイワン族のルカイさん。

3人の大学生の皆さんとは、お昼のお弁当を一緒に食べたり、さまざまな体験活動に参加したり、一日中いっしょに過ごしました。

民族衣装も体験しました。

 

 同じ世代の「原住民」の若者たちと交流できたことは、とても貴重な経験となりました。漢字表記の名前と「原住民」の母語による名前という、まったく異なる2つの名前を持っていること、中国語ではコミュニケーションが可能であっても、それぞれの母語で話すとお互いにまったく理解できず、まるで外国語を聞いているようであること、などなど・・・3人の口から飛び出す話は、日本人には普段経験がない(それゆえに容易に理解できない)話ばかりで、もう驚きの連続でした。

早朝に台南を出発して、また台南に戻ったのはその日の夜のことでした。なかなかハードな一日でしたが、「原住民」の「朋友」(ともだち)たちのおかげで、とても充実した一日となりました。非常感謝!

 

(つづく)

多文化理解実習(台湾)の報告(1) 台南:歴史の足跡をたどる

 今年度の多文化理解実習(台湾)では、台南、屏東、台北の三都市を7泊8日の行程で回りました。今回は、前半の台南と屏東での活動について報告します。


(1)台南―歴史の足跡をたどる

台湾が「歴史」の舞台に登場するのは16世紀、大航海時代のことです。日本に向かうポルトガル船が台湾を「発見」したことがきっかけといわれています。以後、オランダ(東インド会社)、それに続く明の鄭氏と清朝、19世紀末からの日本(大日本帝国)まで、台湾は度重なる外来勢力による統治を経験してきました。そうした歴史が先住者と外来者との複雑な関係を生み出し、多様なエスニック・グループが共存する社会をつくりだしたのです。

台湾の「歴史」の幕開けの地となったのが、台湾南部の都市・台南です。オランダの東インド会社が拠点を築いたことに始まり、台湾の複雑な歴史が凝縮されています。私たちは、市内の国立台湾歴史博物館で台湾の通史を勉強したあと、街中を歩き回って(ときには市バスにも乗って)歴史の足跡をたどりました。オランダ統治時代の城跡である安平古堡、赤嵌楼をはじめ、鄭成功ゆかりの鄭成功廟や鄭氏家廟、中国大陸の文化を色濃く残している大天后宮や孔子廟、そして日本統治時代の建造物を利用した国立台湾文学館などを訪ねました。どれもその時代を問わず、台湾の歴史の一部分を象徴する遺産として、台湾の人々によって大切にされていることがわかりました。

楼(プロビンティア城跡)。オランダ東インド会社が建てた当時は、右の写真のようなかわいらしいお城だったそうです。

 

勇ましい鄭成功像
台湾最大の媽祖廟「大天后宮」。媽祖(中央)は中国南部ゆかりの女神様。 左右には必ず順風耳(左)と千里眼(右)の姿があります。

高く積まれているのは「金紙」と呼ばれるお供えもの(おカネ)です。金紙はお供えする神様によって種類も値段もちがいます。

台湾や世界の文学作品を集めた国立台湾文学館。日本統治時代の台南州庁の建物を修復したものです。台南には日本の植民地時代の建物が数多く保存されています。

台南は「小吃」でも有名です。小吃とは夜市や街角の屋台、大衆食堂などで食べられる台湾料理のことです。安くて美味しいのが魅力ですが、とくに台南の小吃は種類も豊富で、ここでしか味わえないものがあります。「食文化を通じて台湾を理解しよう!」をモットーに、台南での活動の合間や食事時には、いろんな小吃を食べ歩きました。

擔仔麵など台南の小吃
のどの渇きを癒してくれたのは、新鮮なフルーツジュース。 左手はいろんなフルーツを使ったミックスジュース、右手は レッドドラゴンフルーツのジュースです。

 台湾の夏といえば、マンゴーです。台南はマンゴーの産地としても知られています。夕食後には老舗のフルーツパーラー「莉莉水果店」で、最高級品種のマンゴー「愛文芒果」のかき氷を堪能しました!

愛文芒果
愛文芒果のほか、台湾原産の「土芒果」も盛られています。