2004年の米大統領選に決着がついたらしい。現職のブッシュが僅差で勝って, ケリーが敗北を認めて相手にお祝いの電話を入れたということである。 またこれで4年間もあのサル面を見るのかと思うとうんざりであるが, 個人的感慨はおいて,これが地球環境にもたらす影響をちょっと 考えておこう。
2001年5月17日,ブッシュ米大統領は国家エ ネルギー基本政策(National Energy Policy)と題する報告書を発表し, その実施のために「総括エネルギー法案」を連邦議会に上程した。 これは民主党の反対のために不成立に終わり,その後も審議は難航して いる。難航にはもちろん理由があり,この政策案そのものが 大きな問題をはらんでいるのだ。
National Energy Policy(PDF)上記の 基本政策では,米国のエネルギー危機が深刻であるとして, エネルギー安全保障を重視している。なんでも安全保障に結びつけるところは アメリカのいつもの発想であるからとりあえずほっとこう。 一方でこの政策ではエネルギーの需給の不均衡,つまりエネルギー不足を 問題視して,いろいろと言及している。なかで見過ごせないのは原発依存への 傾斜と地球環境問題の軽視である。軽視どころか実は無視といってもよい。
つまり,エネルギー不均衡(「エネルギー不足」をかっこつけて表現すると こうなるのだね)を何とかするには,エネルギー生産を増やすしかない。 それでも地球環境問題は考慮しないといけないというスタンスを 一応とっている。
で,その帰結は,エネルギー不足を解消して,なおかつ地球環境を 維持するには原発を使おうということなのである。 現時点でも冷静に判断すれば原発の継続的な運転と,廃棄物や廃炉の 後始末がとうてい 地球環境の維持とは相容れないのは明白だ。 しかもそれが経済的にも 引き合わないものであることは明白なのに, 多額の国家予算を原子力に振り向けさせて元をとろうという エネルギー業界の意向と,おそらくは軍事産業からの 要請を受けてのものなのであろう(注)。
もっとも,この報告書がおかしいのは,環境問題への対処という名目で 原子力を推進するとしながら,肝心の環境問題への記述がきわめて 貧弱であるということなのだ。 170ページもある報告の中で,わずか12ページがそのために 割かれているにすぎない(注)。つまるところやりたいのは, 原発も動員してエネルギーをじゃんじゃん生産したいという たけののことである。
もっとおどろくべきことには, 実はこの報告書には京都議定書に関する記述が1行もない。 (うたがう人は,報告書の PDF ファイルから Kyoto という単語を検索してみてほしい)。 ブッシュ当選から半年の時期といえば, アメリカが京都議定書からの離脱を国際社会に言い始め, 小泉首相が「やはりとどまっていただくようにしないと」などと やっていた頃ではないか。 その時期に,もう決まってしまった既定方針として, ブッシュ政権は 京都議定書をすっかり無視していたのである。こいつは2003年に イラクへの武力侵攻について国連に諮りながら,実は国連の 態度がどうなろうと戦争を始めることだけは既定方針にしていて, 国連決議が出そうにないとなると平気で軍隊を動かした やり方とまったく同じである。
もちろん政府の政策は議会での承認を得なければ動き出さない。 米議会の中でも,ブッシュの エネルギー法案に対しては反対が根強く,審議は難航している。 とにかく京都議定書の 調印にこぎつけたクリントン政権が残した遺産を無にする わけにはいかないというわけだ。 あの時 クリントンの懐刀の ゴアが京都に飛んで, 米エネルギー産業からの クレームを背景にした注文をつけながらも, とりまとめに成功した貴重な成果なのだ。 それを無にすることは,さすがにアメリカの世論も そう簡単には認めていない。
しかしここに来てブッシュ再任ということになると, 政権としては既定の方針をより強い態度で押してくるのは 当然の流れであろう。 「イラク攻撃によって世界はより安全になった」というのが, 選挙戦でのブッシュのせりふだった。入国チェックで指紋押捺から 電子パスポートまで要求するようになったアメリカは,確かに安全に なったのかも知れない(注)。 そういうことを平気で公言する大統領であるから, 「地球温暖化はデマだ」などというセリフも出る。まだまだそれを 聞きながら,一方で近年多発してきている異常気象と災害の ニュースに心を痛めなければならないというのは,どうにも うんざりした状況だ。
なお,原子力発電を地球温暖化対策に有効なエネルギー生産手段 として推進しようというのは,日本の財界も同じスタンスである。 同じというよりは,アメリカに追従していっているという, いつものやつなのだ。親分が変わらないで子分が変わるなんて事は ない。まだまだ日本の環境政策は「宗主国」アメリカに引き回されるのか。
2004/11/04, 小波秀雄
ブッシュ再選後3日もしないうちに,米軍はイラクへのさらなる 強硬な軍事作戦に出た。米国民の承認が得られたということであろう。 イラクの都市ファルージャの包囲殲滅作戦が始まり,7日には 空爆開始,地上軍の侵攻が11月8日に開始されたのだ。 その内容についてここで触れようとしているのではない。
朝日新聞の報道(ウェブ版 11/07 23:28)によると,包囲されたファルージャについて次のような記述がある。
約30万人とされるファルージャ市民の大半はすでに町を脱出。 米軍の推定によると、市内に残る武装勢力は、アラブ系外国人を含め核となる勢力が1200人おり、これに多数のイラク人住民が合流して計3千〜6千人とされる。なるほど,この街のふつうの住民は大半(この言葉も曲者だ)逃げ出してしまっていて, ほとんどは武装勢力とその同調者数千人がいるだけなのだな,とこの記事は 読める。 それが前提であれば,この攻撃によって死ぬのはアメリカと対立している 武装集団と同調者がほとんどということになり,「まあ,それなら仕方ないか」と 思う人もいるだろう。私はそう思わないが。
なお, この報道の前日には,国連のアナン事務総長が,ファルージャへの 総攻撃を中止するよう書簡で要請している。それに対して米英とイラク政府は 抗議しているのだが,まあ世間体はつくろわなければならなくなったという ことかも知れない。
しかし,24時間後(11/08 21:39)の記事では,ファルージャの現況について 次のような記述があった。
ファルージャの人口は約30万。多くは戦闘をおそれて脱出したものの、CNNによると今も約5万人が残っているという。米軍は、外国人を含む武装グループが2000〜2500人いると推定している。ということで,ちょっと話がちがう。つまり作戦が進んできた段階で, 「実は・・・」ということになったわけだ。兵員を完全に揃えて大規模空爆を 行って,あと数時間後には地上兵力も突入という段階だ。 「そこまで行ったなら 後には引けないだろうね」と思う人もいるだろう。私はそう思わないけれど。
さて,私がこの報道に意図的なものがあるのではないかと疑念をもったのは, 最初のニュースで,市内にいる住民に関する言及をまったくしていないことが 気になった時からである。だからその次の流れに注目した。 そうしたら,事態が不可逆な状況に進んだ後で,欠落していた 情報が現れたのだ。欠落していたのは,意図的に 隠していたのではないか。
朝日の報道姿勢も,最初のニュースに関する限りおかしい。 ファルージャに残っている住民についての 記事内容には,一体誰がそういっているのかという部分がなく,つまり客観事実の報道である かのように記述しているのだ。「米軍の推計によると…」というのは, その後の部分である。修飾語の位置がちがうという問題ではない。 実際には,この種の情報を提供できるのは 米軍しかありえないので,米政府寄りのバイアスがかかった情報に ならざるを得ない。したがって報道の公正を保とうというのであれば, 「誰が言っていることなのか」をきちんと書かなければならないはずだ。
2004/11/09, 小波秀雄
もちろん皮肉である。皮肉を真に受けてアメリカが安全な国だと 思って行動した結果,大怪我をしても当方は責任をもてません。
12ページの中には,どっかの山奥で釣りをしているブッシュらしい 人物の写真がどかんと載っているだけのページもある。
今回の番組改編問題に対するNHKの対応には満身の怒りを感じます。
まともな内部調査もせずに半日で「調査報告」をひねり出し,それをなんと全国ニュース枠で流すとは見識のかけらもありません。
元総局長の談話と朝日の出している克明な記録を見れば,どちらが嘘をついているかは明白です。もし仮にNHKの「公式アナウンス」がもし真実だったら,告発したディレクターは懲戒相当ではないですか。それをとがめられないのも後ろめたいからでしょう。
BBCはイラク戦争の時に政府発表の嘘を曝露するだけの気骨があったのに,NHKの首脳部は腐敗し切っているというしかありません。
抗議のために,当面は受信料の支払いを停止します。 受信料を支払っているのは国民であって,政治家ではないということをお忘れなく。