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こなみ日記

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2010-02-07 世論調査をコントロールするための言葉の使い方

_ 今日の毎日新聞に載った内閣府世論調査は,殺人の時効廃止や死刑制度の存廃に関するアンケートの結果についてのものでした.ネットの記事はこちららです.

_ その中で,死刑制度を容認するかどうかという項目があるのですが,この質問の文章はどうみてもおかしい.選択肢は次の3つです.

  1. どんな場合でも死刑は廃止すべきだ
  2. 場合によっては死刑もやむを得ない
  3. わからない・一概に言えない

_ これはどうみてもへんです.1 と 2 では設定されている論理的な枠が違います.1 は「どんな場合でも」ときわめて強い限定を課しているのに,2は「場合によっては」と弱い条件しか与えていないのです.漠然と「死刑は止めた方がいいだろうなあ」と思っている人は 1 を選べないだろうし,「死刑は止めた方がいいのかも知れないけど,やっぱりオウムの連中とかもいるし・・・」という人は 2 を選ぶでしょう.つまり,あいまいなまま揺れ動く人の心からすると,死刑存続のほうに回答を誘導できる文言なわけです.

_ ためしに1と2の文章の前置き部分を入れ替えてみましょう.

  1. 場合によっては死刑は廃止すべきだ
  2. どんな場合でも死刑はやむを得ない
ちょっと文章としてはへんですが,これだと2を選ぶ人はかなり減少するでしょう.

_ あるいはこんなことも考えられます.―「どんなことがあっても太陽は西からは昇らない」,「場合によっては太陽は西から昇る」どっちを選ぶ?―という質問を受けたとすると,多くの人は「太陽は東から昇るというのが常識だ」と思っていたとしても,「ひょっとして,西から昇ることもあると答えた方がいいのかなあ」と迷うのではないでしょうか.つまり,選択肢にバイアスのかかった前置きを付ければ,回答者の心理をいじれてしまうのです.これでは公正な世論調査にはなりません.

_ 私自身は,日本の死刑制度存続の世論や被害者感情を過度に強調する最近の風潮は,法理論のもつ公正性や客観性を曲げて,情緒的で不公平な方向に社会を誘導するものと思っているのです.だからといって,上の主張にはなんらバイアスは持たせていないつもりです.坊主憎くても袈裟は綺麗かも知れないということわざは,とっても大事なんです.え,そんな諺は知らない?

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Before...

_ A [追記ですみません、「その対ではなく」ではなく「その対とともに」とさせてください。他にも質問文の内容、前の質問の内容な..]

_ masa [1は死刑制度を廃止すべきかどうかについて言っているのに、2は個々の犯罪者を死刑に処すべきかどうかを言っている点できち..]

_ masa [「世の中には死刑に処すべき輩もいるけれど、そうではない人間まで誤って処刑してしまうリスクは避けるべきだ」のような考え..]

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2009-05-05 健康ならホメオパシーも効いたように思える

_ kikulog から

菊池誠さんのブログで,ホメオパシーに関するいくつかのスレッドが続いています。その中で次のような投稿がありました。nawaさんという女性の方の記事を全文引用しておきます。
私は二人のこどもを自宅で出産、(女産師さん立ち会い有り)その時にホメオパシーを使いました、子供は自分の力で元気に産まれてきました。その後軽度の不調にもホメオパシーで対処してきました、もちろん、体を作る食べ物のことが一番大事と考え、勉強もして日々食事を作っています。その結果、家族はとても健康で、病院にお世話になることも、市販の薬も必要なく、健康保険料を払わなくてもやっていけるかも。と、思うことさえあります。子供がやんちゃ盛りなので事故やけがのことも考えて、保険料は払い続けますが。
 自分の体に自分が責任をもつ、ということが大事なのではないでしょうか。
 アスベストの害を政府が後に認めた、と言う事実を思い出して下さい。環境ホルモンの危険性が近年になって事実として報道されたことも。
 今は公に予防接種や抗生物質、石油から合成された添加物,様々な洗剤、化粧品にビタミンなどのサプリメントまで。これらのものの害は取りざたされてはいませんが、後になって明らかになることだってあるのでは?
 多くの人が危険を感じて 自らそれらの物を遠ざけるようになった、それは自らと、その子孫を守るための自己防衛なのです。 
 自分の体に入れるものは自分で選び取る、そして決して人任せにはしない、なぜなら結果は常に自分に帰ってくるから。

_ 個人的体験の一般化

細かい論点はまずおいて,このことはまず指摘しておかねばなりません。すべての日本人がこの人と同じく「現代医学」を避けて,ホメオパシーという代替医療を選択したとすると,この国の妊産婦の死亡率と新生児の死亡率は,世界的にもよい現在の水準から一気に凋落することはまちがいないということです。ちょうど今日の毎日新聞の健康欄に,大阪大学大学院の木村正教授(生殖医学)の解説記事がありましたので,それも参考にしながら書いていきましょう。

_ 出産は本来リスクをともなう

分娩における母親の生命のリスクが非常に高いからこそ,医学はそこに介入するのです。会陰部などの裂傷による出血は,昔は多くの産婦の命を失血によって奪ったものです。もともと人間の場合,進化的な理由から母親は安産できるような体になっておらず,ある割合で産婦は死ぬものであったという言い方さえできるでしょう。もちろん,妊娠出産によって母体にかかる負担はどの生物でも大きいわけです。妊娠中毒と俗にいう妊娠高血圧は最近まで妊婦の死亡原因の一位でした。

生物というものは,生き残り数が親の世代の数を上回るという数勘定さえ合っていれば,それぞれの個体がどんなふうに死のうが種は生き残るという,厳然たる進化の法則によって歴史を作ってきたわけです。たまたま体のできがよくて分娩後も生き残る運のよい個体もあれば,たまたまどこかの構造が出産に適していなくて,死んでしまう個体もいる。ヒトは直立歩行を進化させることで,食料の確保や行動範囲の拡大などによって大きく適応度,つまり次世代に残せる子孫の数を増加させることに成功しました。その反面で出産における生命の危険は大きくなったわけです。それでもこれらの適応度のかけ算の結果は,種の繁栄にとって有利だった。これが生物の法則の厳然たる帰結です。

木村教授の記事によれば,発展途上国や日本の近世のように医学の介入がない場合に妊娠と出産にともなう死亡率は 1/200 程度らしい。また現在でも250人に1人ぐらいの妊婦が命に関わる重症状態に陥っているとのことです。1950年にはお産に関係して600人にひとりが亡くなっていたものが,最近では2万人にひとりという状況に改善されたというデータもありました。

_ たまたまうまくいくと自分が正しかったと思ってしまう

さて,nawaさんという人は,母胎として正常に機能する体を運よくもっていたのでしょう。もっとも「運よく」といっても,上の統計から見て9割以上の人はそんなもののはずです。ところが,そうではない人はかならずいます。その人が nawaさんと同じく,ホメオパシーなどという気休めと「医学に頼らない自然な分娩」だけで出産しようとした場合には,生命の危険が発生します。もし,この種の行動がすべての妊産婦に広がった場合には,日本における妊産婦の死亡率は一気に一ケタは増加することになってしまうはずです。

自分がうまくいったから他人も同じことをやったらいいというのは,人間一人一人が異なった体や心や生活環境を持っていることを見ない,きわめて傲慢な言い分でしかありません。実際,私が直接に知る知人の範囲でも,異常妊娠の手術を受けた人,あるいは奥さんが出産時に亡くなった人,出血を見逃して危ない状態に陥った人など,数例の危険な問題が発生しています。なお,この場合に「個人的体験を一般化するな」という批判は,統計学的には正しくありません。nawaさんのように確率的に頻度の高い現象に出会った体験をもって頻度の低い現象はないかのように推論することが誤りなのです。逆にある現象に何度か出会ったら,それは頻度が無視できるレベルではないというのは,正しい推論です。

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_ かとう [昔の人は多産だった。だから現代医学は〜〜。 と言い出す人もいるのですが、最初、二度目のお産ぐらい で、ばたばたと..]

_ こなみ [この人の書きっぷりをみると,自分では論理だと思っている流れが実のところまったく非論理的なんですよね。事例を暗示すれば..]

_ まさ [やや話はそれるんですが、プラシーヴォ効果がおおいに期待できるような症例に対してインフォームドコンセントを徹底するのは..]

_ viagra [この間も俊太郎の詩をお http://www.stlouisbusinesslist.com/business/5..]

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2009-04-29 ホメオパシーはインフルエンザには効きません

_ 豚インフルエンザがフェーズ4に

報道されているように,メキシコで豚由来のインフルエンザがヒト間での感染を起こして,各国で患者が発生する事態になっています。メキシコでは100人を超す死者が出ている様子ですが,実態については謎の部分が残されており,今後の調査の結果を見ないと,その評価はできないようです。他の国ではまだ死者はないようで,おそらく通常のインフルエンザ程度の症状の重さを想定しておけばよさそうです。なにはともかく,報道をよくチェックしながら冷静に行動するしかありません。

_ 悪徳商法まがいのホメオパシー

こういう状況になると,この事態を奇貨として,何の役に立たない治療法や薬を売りまくろうという連中が世の中にぞろぞろと現れてくるものです。これは用心しないといけません。それは悪徳商法というものです。 ホメオパシー信奉者が,困ったことにそういった動きを見せているようです。ホメオパシー体験談紹介というウェブサイトの記事をみてみます。ホメオパス(ホメオパシー信奉者)である沖縄の女性の質問に答える形で次のようなことが書かれています。
まず免疫を低下させるワクチンを接種しないこと、急性の発熱症状などを薬剤で抑圧しないことが大切です。 YOBOキットから、インフルエンザに合うレメディー、インフルエンザイナム、オスシロシコナイナム、ユーパトリューム、ジェルセミュームなどで予防プログラムを実行すること、Rx Chroni-inf、ウィンターセット、サポートHaiなども、万一に備え用意されておくとよいでしょう。 またインフルエンザの特効薬になるのではないかと昨年秋に沖縄の新聞や週刊誌で取り上げられ話題になった沖縄の栴檀(センダン)から作られたレメディーがあります。豚インフルへの効果のほどは、わかりませんが、ご希望の方は、ホメオパシージャパンまでご注文ください。ポーテンシーは6Cと30Cがあります。販売期間は5月末とのことです(注:上述したとおりレメディー化したセンダンがインフルエンザに合うかどうかは定かではありません)
これはひどい。まずワクチンが免疫力を低下させるなどとは,妄言も甚だしい。もっとも,新型のインフルエンザについてはワクチンがないことが防疫上最大の問題なのですから,「接種しないこと」という注意はそもそもナンセンスです。 問題はその後です。いろいろなレメディーの宣伝です。これらは一切効きません。ホメオパシーではレメディーという名前で「薬」らしきものを販売していますが,これらはいずれも薬ではなく,薬効はまったくありません。あるとしたら心理的な効果であらわれるプラセボ(ニセ薬)効果だけです。 そもそもレメディーというものは,いろいろな物質を極端に薄めて砂糖に混ぜた丸薬ふうの錠剤です。この薄め方が半端ではなく,事実上分子一個も残らない程度にまで希釈してしまっている代物です。こんなものに効き目はありません。砂糖の不純物や使った水の容器の汚れや扱う人の手の脂やふけのほうがはるかに多いはずです。科学的に考えて,レメディーの効き目はなんらありえません。あるのは「効きそう」というムードだけです。 しかし,インフルエンザはウイルス性の疾患であって,本人の心理的な状況がどうであれ,免疫がない状態でウイルスに感染すれば,一定の条件下で罹ります。レメディーなど効きません。 豚インフルエンザの発生で世の中に不安が広がっているときに,このような効きもしない「薬まがい」の商品の宣伝を行うというのは,いわゆる便乗商法の最たるものです。きわめて悪質な動きであると談じざるを得ません。
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_ Wwrduguw [jgdN29 この間も俊太郎の詩をお http://www.stlouisbusinesslist.com/busi..]

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2007-11-01 「教育者」七田眞

_ 幼児にオカルト教育

幼児教育の世界で七田眞という名はよく知られているようで,中でも「七田チャイルドアカデミー」というフランチャイズの幼児教室は全国に展開しています。他にも「七田式××」といった能力開発をうたうメソッドのたぐいが本になったりしています。この人物,しかしながらとんでもないオカルト的な風説を主張し続けていて,しかもマスコミがほとんどそれを取り上げないままに一種の権威となりつつある状況が生まれています。これは憂慮すべき事態です。

まずは七田氏が書いている日記の「七田の子ども達のイメージ力(1)」という話から引用します。

子ども達のイメージ力には驚嘆すべきものがあります。その例を、紹介していきましょう。今日は、ロウソクの火をイメージで消してしまう子ども達の話です。

教室の先生のレポートによって紹介します。

―年中3名のクラスでロウソクけしのイメトレをしました。瞑想・呼吸・棒のイメージの後、色を見るテストをしてみました。3色の色を出した後、火のついたろうそくをイメージしてもらいました。イメージの中で炎をどんどん大きくさせ、次に小さくさせました。最後は、炎を消してしまうイメージをしてもらいました。

その後、実際に1本のロウソクに火をともし、3名の前に出しました。イメージしてきたように炎を大きくしてというと、炎がすぐ大きくなりました。小さくしてと言うと少しずつ炎が小さくなってくれました。しかし、すべてを消し去ることはできませんでした。

1週間後、もう一度イメージでロウソクを消すトレーニングを行ないました。前回、小さくしたことは凄いことだと伝え、今日はイメージの中でも、実際の場面でも、炎を消してしまおうね。きっとできるよ、と暗示して行ないました。

まず、イメージの中で最後にプツンと消させました。目を開けさせて、イメージさせると、今回は本当にプツンと消えてしまいました。今回のイメージトレーニングは本当にビックリする結果でした。(2007年06月25日)

どうでしょうか。これがまともだと思ったらえらいことです。念力が可能であるなどということを主張する人はこれまでいくらでもいましたが,どれ一つとして検証されて事実であることが立証されたものはない,それどころか,インチキであることが証明されたことはいくらでもあった,つまりオカルト以外の何者でもないからです。この通りのことが七田チャイルドアカデミーの教室の指導者から報告されているとすると,可能性は限られます。教室から虚偽の報告がなされているのか,七田氏が実在しない架空の話を創作しているかです。

_ 立証された「超能力」は存在しないし,インチキは数限りない

かつてイスラエルの「超能力者」ユリゲラーが来日して日本テレビの番組に出演して,「念力」でスプーンを曲げて見せたり,全国の時計を「止めて」みせたりしたしたことを記憶している大人は多いでしょう。私はテレビ番組そのものは見ていませんが,手に持って曲げていると聞いたときに,それは手品としては見せられないつまらない芸にすぎないと思いました。

で,事実はその通りで,彼のほとんど唯一の持ちネタであるスプーン曲げはインチキであって,ただの手品にすぎないことが見破られてしまいました。時計を「止めて」みせたトリックは,その実彼は何もしていないはずで,芸ですらないのです。ただの確率の法則の現れにすぎません。その後彼はいかなる実験的な検証の提案にも応じることなく,ひっそりと活動しているようです。ユリゲラー以外にも世に出てくる手合いはいくらもいますが,高額の懸賞がかけられているにも関わらず,誰ひとりとしてきちんとモニターされた環境での現象の再現はできていないのです。

_ 「超能力」少年たち

ユリゲラー騒動のあと,日本に何人もの「超能力少年」が登場しました。スプーンを曲げてみせるだけの芸です。スプーンを後ろ手に隠し持っておいて,しゃがんだ姿勢から立ち上がりながら放り投げると,落ちたスプーンは曲がっているというのを,週刊誌で見た記憶があります。なんと見え見えな!床か体のどこかに押し付けて曲げていることはだれが考えても分かりそうなものです。でも,それをテレビはもてはやした。まともに検証しようとはしなかったし,むしろインチキを冗長したのです。

ところが,ある少年が週刊朝日の取材に応じて高速度撮影などを使った検証に応じた結果,そのトリックがばれてしまいました。その少年はしかし幸せでした。テレビ局があくまで超能力者として持ち上げつづけた清田益章という少年は,長じて常習的な犯罪者になってしまったのです。

 知人から大麻約13グラムを譲り受けたとして警視庁組織犯罪対策5課は31日までに、大麻取締法違反容疑で自称超能力者「エスパー清田」こと清田益章容疑者(44)を再逮捕した。同容疑者は、1970年代にスプーンを曲げる超能力少年として数多くのテレビ番組で話題となった。調べに対し、「大麻を吸うと気分が高揚し、感覚が研ぎ澄まされる」などと供述。逮捕容疑に加え、約2年前から吸引していたことを認めているという。
 清田容疑者は、1974年にユリ・ゲラーがブームとなったのを機に、直接力を加えずスプーンを曲げられる超能力少年として、テレビ出演。「エスパー清田」の名で一世を風靡(ふうび)した。(2006年11月1日06時02分 スポーツ報知の記事より)
しかし,この元「超能力」少年の件で非難されるべきなのは,彼を利用したテレビ局もさることながら,むしろその親のほうではないでしょうか。親が子どもを売り出そうとして積極的に行動していたことは当時目立っていましたし,そもそも小学生のテレビ出演は親が同意しない限りできません。

あるいは教師は表立って責められる立場にないかも知れないけれど,何か働きかけることはできなかったのだろうかとも思います。私だったらなんらかの対応をとったでしょうが。これらの少年の場合はどうだったのでしょう。

_ 子どもにウソをつかせれば人格は破壊される

話を七田氏の日記にもどします。念じることだけでろうそくの炎を動かすことは絶対に不可能です。炎は発熱的に反応している気体分子が作る気流の塊であり,その気体分子は気体分子との衝突でしか動きません。分子を動かすには物理的な力が必要です。そんな物理的な力は,意識からは作られないのです。もしもそれで動いたという報告があるとすれば,子ども自身が実は息を吹きかけていた,あるいはただの炎のゆらぎを自分が動かしているものと思い込んで報告し,大人もそれを追認した,あるいはまったくのウソをどちらかがついた,これらの可能性しか考えられません。

つまりは欺瞞を幼児に強いたことになります。これはきわめて悪質で,幼児の人間性を破壊する所業です。子どもは疑うことをしないので,本気で自分に念力があると信じ込むでしょう。その結果は,数々の殺人を引き起こしたオウムの教祖麻原彰晃の「空中飛翔」を思い出してほしい。あるいはユリゲラーを真似してインチキを披露し続けた清田少年の末路を思い起こしてほしい。

_ 超能力を競わせる教育

さらにこの日記はぞっとするようなレポートを取り上げます
次は、別の教室の先生からのレポートです。
―今月はロウソクを消すイメージをして、本当にロウソクをイメージで消してみるよ。と伝えると、「えー、無理無理」という子が多数でした。大阪や沖縄のお友達はできたことを伝えると、「よし、ぼくらもやる」とやる気になりました。イメージの中でロウソクを消し、その後、実際にやってみましたがあまり変化なし。2週目、またやりました。3分後に炎が急に小さくなったり元に戻ったり1週目と違う変化があり、「おやっ」と私が思っていたら、また急に小さくなって消えてしまいました。嬉しくて全員で拍手。私も2回目で消えて驚きでした。3週目の、4週目もより同じように成功しました。
これはまったく開いた口がふさがらない,よく考えてみれば戦慄すべき光景です。よその教室でできたからといって,子どもたちに競争心をかきたて,その結果ぜったいに不可能なことを強いてウソを作っているわけです。その子どもたちの「えー,無理無理」という正直な叫びを抑圧してしまったことも見逃せません。真実のところこのレポートは,できもしなかったことを報告してトップを喜ばせることで点数を稼ぎたい指導者の作文なのでしょう。いずれにせよ,これではカルト教団と変わりません。あまりにもすさまじいことが行われています。

_ 教育の名に値しない

大人が子どもに念力を信じ込ませるなどというのは教育の名にもちろん値しないし,人格を破壊して嘘つきを育てる結果をもたらしかねないのです。七田氏の言動については,これ以外にも信じられないほどの非科学的なものがあり,それは社会問題として大きな意味をもつと考えられるので,さらに書き続けることにします。

本日のツッコミ(全7件) [ツッコミを入れる]

Before...

_ あんこ [”バイブル商法”の極みといえるかもしれません いつの間にか、プロフィに心理学博士や日本文化振興会名誉会長と加筆されて..]

_  [>立証された「超能力」は存在しないし 現在ニセ科学超能力オカルト批判をやってる先生方が どのあたりの層に向けて情報発..]

_ gets [教育の目的は被教育者の脳にバックドアを仕込むことです。 この目的のためには、迷信を権威付けして見せたり、オカルトを本..]

_ ろびん [七田眞ってそんなところまでいってしまってたんですか! 長男が自閉症と告知されたその日に本屋に行き、知らないということ..]

_ 匿名 [実際、自閉症のお子さんがよくなったり、言葉が少なかった子が表現豊かになったり…という例がたくさんあるそうです。 七田..]

_ がんのすけ [はじめまして。 きくちさんのブログ↓経由で参りました。 http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.j..]

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2007-10-31 想像力の欠如

_ 「手話通訳気が散る」

こんな見出しをつけた記事がありました。

島根県安来市民会館で9月17日に開かれた市主催の敬老会で、独演会をしていた落語家の三笑亭夢之助さんが、舞台に立つ手話通訳者に「気が散る」などと退場を求める発言をしていたことが分かった。通訳は舞台の下で続けられたが、同県ろうあ連盟は「聞こえない人に対する侮辱」と夢之助さんや市に抗議。夢之助さんは謝罪し、市も当日来場していた聴覚障害者3人に直接謝罪した。
市によると、敬老会には今年70歳となるお年寄りや市民計247人が参加。大きな講演会では手話通訳者をつけているといい、この日も3人を配置していた。
 ところが、市は夢之助さん側に通訳がつくことを説明しておらず、独演会開始後5分ほど過ぎたころ、夢之助さんが「落語は話し言葉でするもので、手話に変えられるものではない」と発言。更に「この会場は聞こえる方が大半ですよね。手話の方がおられると気が散りますし、皆さんも散りますよね」と話し、会場からは笑い声が聞こえたという。
 その後も「どうにかなりませんかね」「皆さんが良いとおっしゃるなら構いませんが。どうなんでしょうね」などと退場を求める発言を続けた。通訳の女性は主催者側に促され、舞台の下に降りて手話を続けた。(後略)毎日新聞 2007年10月31日 2時30分
なんともひどい落語家がいたものです。笑えない。

_ 聴覚障害学生のいる教室

私の担当しているゼミにはまったく耳が聞こえない学生がいます。学部生全員の必修科目にはもうひとりの学生も加わって,ふたりの聴覚障害をもつ受講者が前の席に座ります。いずれのときもノートテイカーが両側についているのですが,話し言葉をすべて書き取ることは不可能なので,こちらは話の速度を落とし,言葉の言い間違いをしないように注意し,かつキーワードや重要なセンテンスは黒板に書くという対策をとっています。ゼミの当番で発表する学生にも配慮を求めて,レジュメの作成から発表の仕方まで事前に個別指導しまし,発表のときにも注意を促します。ゼミというのはそんなことも訓練するものなのです。

_ プロならどんな状況でもこなすのが当然

当然授業のテンポは落ちますし,話すときのストレスもかかります。手話通訳付きのニュースに比べても,ノートテイカーがつく学生への講義のテンポはかなり落とさざるをえません。話すという仕事は乗りでやる要素もあるので,実はけっこう大変なのです。が,そこはプロの気概をもって頑張るのが当たり前。経験を積めばもっと楽に対応できるだろうという思いでやっているわけです。そのことを考えると,この落語家のやったことはまったく許しがたい。どんなむつかしい状況でも最善の努力をして切り抜けるのがプロの仕事というものです。

「この会場は聞こえる方が大半ですよね。…」という発言は中でも許しがたい。「大半」ということは,そうでない少数の人がいることを前提においているわけなのです。搭乗者名簿に日本人の名前しかない国内線の飛行機の中でへたくそな英語のアナウンスを流す乗務員には滑稽な気がするもので,あれはやめてもいいと思うことがありますが,外国人が乗っていて英語のアナウンスをしなかったら問題ですよね。ましてこれはあからさまな差別的発言です。どうやら人気のある落語家らしいので,どんな軽口でも受けると思ったのでしょう。もっともいまどき人気のある噺家というのはテレビに出る顔のことを指すらしく,最近なくなった吉朝なんかはすごい芸をもった中堅落語家でしたが,人にいうと「テレビに出てないの?知らないなあ」という感じでした。と,ちょっと脱線。

_ 落語家ひとりの責任か

さて,このイベントで夢之助が吐いた暴言だけが非難されるのは,よく考えるとおかしいのではないでしょうか。どうして主催者は手話通訳を舞台下に降ろすという対応を取ったのでしょうか?そして何よりも,どうしてこの落語家の心ない軽口に対してブーイングが起きなかったのでしょうか?あまつさえ付き合って笑ってやった聴衆がいたとは。…

大勢に迎合して少数者に思いを馳せることのできない,人間に対する想像力の,ひらたくいえば思いやりの欠如した多くの人々の姿を見る思いがします。一方で,非道な事態に直面して異をとなえることがないこの国の精神的風土にも,今更のように絶望感がわいてきます。けっして美しい国なんかじゃない。

結局は障害者団体の抗議があったために,この落語家も自治体も謝罪したのだそうですが,笑った人々はいまごろどう思っているのでしょうか。「ああ,自分は人を傷つけてしまったのだ」と自分自身の痛みとともに思い返してくれていればいいのですが,「やばいことをやってしまったな」と感じているだけなのかもしれない。下手をすると今になってあれはけしからんなどと手のひらを返しているのかもしれない,何も感じていないかもしれない。そんなふうに想像するのは不遜なことではありますが,しかし,不祥事に対して「世間を騒がせて申し訳ない」,「関係者にご迷惑をかけて申し訳ない」が謝罪のことばであるようなこの国の状況をみると,そこまで想像せざるをえないのです。

_ 鈍感さの罪

血液型で性格が決まるというニセ科学的俗信はなぜ問題なのか?…これは私がいま学生に提示しているレポートの課題のひとつです。まさに夢之助の暴言という問題は,この課題と共通した構図に立っています。「軽く楽しく人を傷つける」という陰惨な行為が根底にあるわけです。しかも本人は気がついていない。鈍感さは時として罪だし,他人の状態に思いをいたすことができないという鈍感さは生まれ育った文化の中で作られてくるものなので,なかなか変えられるものはないのです。心が傷ついて苦しむ能力をもっている若い人たちには,せめて自分の姿に気がついてほしいものだと思うのです。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

_ 技術開発者 [こんにちは、こなみさん。  労働組合関係で男女の機会均等とか、障害者雇用のことを話し合ったりしていると、「まず..]

_ viagra [この間も俊太郎の詩をお http://www.stlouisbusinesslist.com/business/5..]

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2007-10-28 ニセ科学と宗教

_ ゲルマニウムの入浴剤

先日,京都消費生活有資格者の会主催の催しで講演する機会があり,参加者の方からゲルマバスという商品名の入浴剤について質問を受けました。もちろんゲルマニウム系の健康商品はどれもニセ科学商品で,気休め以外の何の効用も期待できません。そのとき,商品の実物もいただいたのでおもしろ半分に眺めました。

_ ルルドの泉?

この商品の袋に「ゲルマの一口メモ」という次のような文章が書かれています。意味不明のところもありますが,そのまま引用しておきます。

南フランスのカトリック教最大の聖地「ルルドの泉」は聖母マリアのお告げによって湧き出て,様々な奇跡を起こしたといわれています。
多年の研究により泉には多くのゲルマニウムが含有されている事が確認されました。
手足を浸すゲルマニウム温浴20分は有酸素運動約2時間分と言われています。

_ ゲルマとルルド

検索してみると,どうやらあちこちのゲルマニウム温浴の宣伝にはこのルルドの泉伝説が使われているようです。会社名や商品名にルルドとゲルマの両方の字句を使ったものも少なからずあります。ここで紹介している製品に限ったことじゃありません。しかしこれってカトリックの信仰を持つ人に対する冒涜ではないでしょうか。

キリスト教の立場からすると,奇跡というのはきわめて神聖な意味をもつことばです。つまり,奇跡というのは神の意志が超越的な形で現れたものであって,すべての自然法則や人間の思惑を超えたものです。科学的に説明できる必要などないもののはずです。そんなにも神聖な奇跡が,実はゲルマニウムという物質の効能によるものだった?…そんなオチにされてしまったとしたら,奇跡そのものが否定されてしまいます。なぜなら,そのことによって奇跡の本質である唯一性が消し去られて,条件が同じなら何度でも繰り返せるという再現性をもった現象におとしめられてしまうからです。

「ええ,そいつはですね。神様が起こした奇跡じゃなくて,たまたまそこのゲルマニウムが多かっただけなんですよ。だから,うちの○×湯のゲルマ温浴に浸かってもらいさえすれば,ルルドの泉の奇跡がほらちょいちょいと。実にかんたんですよ」

となってしまうわけです。何とも無神経な話です。私自身はキリスト教徒でもなく,ルルドの奇跡を信じる立場ではないのですが,信者のかたがたの純粋な信仰心は尊重したいと思っています。人さまが信仰しているものを平気で踏みにじってしまうこの種の宣伝は,人間としてのデリカシーを欠いたものであるとしか見えません。その無神経さにそもそも思い至らない説明があちこちに転がっていることに,この国中にあふれた想像力のなさの一端をみる思いがします。

本日のツッコミ(全9件) [ツッコミを入れる]

Before...

_ こなみ [グールドはドーキンスとちがって,この種の問題に対して白黒をつけないという態度を取った人でしたね。私はドーキンスの主張..]

_ 後藤文彦 [せっかくなので?もうちょっと。 私が気になっているのは、「この種の問題」として、どこらへんの問題に まで白黒つけ..]

_ こなみ [宗教的な「奇跡」に対して私が考えている線は,それが過去の伝承として象徴的な意味を持つものになっていれば,とりあえず異..]

_ kurita [> その人間的な弱さを衝くのもどうかと思います。 うーん、この部分はなんか筋違いじゃないでしょうか。 その..]

_ こなみ [たとえばね,家族の病をなんとか治らないかと思ってお百度参りをする母親(武士の一分にありましたが)とか,そんなところま..]

_ Qbfbyubs [TeakJE この間も俊太郎の詩をお http://www.stlouisbusinesslist.com/busi..]

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2007-10-11 科学と宗教

_ 科学を宗教の根拠に使う

この前の日記で村上和雄氏のことを取り上げたところ,スズキさんとおっしゃる天理教の方からコメントをいただきました(ありがとうございます)。これはとても大きな問題なので,もう少し考えたいと思います。

世界に先駆けて高血圧の遺伝子(DNA配列)を発見したことで,村上氏は生命科学の世界で大きな名声を得ました。その彼がいまや天理教の看板として振る舞っていることはよく知られています。何かで読んだところでは,天理教の教理である「陽気ぐらし」は遺伝子をよい方向に変えることができるのではないか,あるいは笑いでよい遺伝子のスイッチをオンにできるといっておられるようです。

人が持っている遺伝子の大半がオフになっていることは当然のことで,もしも眼の角膜の細胞で爪や消化酵素を作り出す遺伝子のスイッチが入ってしまったら大変なことになります。すべての細胞核に人間ひとりぶんの遺伝情報がおさめられているのですから,必要があってオンになっているのはそのうちのわずかなわけです。受精卵からどんなふうにしてどの遺伝子がオンになっていくのか,それは個体発生における分化の問題として科学的探求の巨大な分野をなしています。遺伝子のスイッチというのはそれ自体が厳密な遺伝的コントロールの下に協同しあって入っていくわけです。

そのような遺伝子発現のオンオフの調節がなんらかの精神的な影響を受けることも,あり得ないとはいえません。ただし,科学的な探求の常として,その仮説は覆されるかもしれない…ここに大きな落とし穴があるのを関係者は気づいていないのでしょうか。

_ 科学に正当性を判定してもらいたいのか

宗教の教義と科学とは,互いに矛盾する体系になってしまうわけにはいきません。宗教が終末論を出して,いついつまでに人類は天変地異で滅びるなどということを主張するのは,いろいろな宗教で何度も繰り返された誤りです。地球の運命は科学にまかせてその予測を尊重した方がいい。逆に死生観について科学が言い立てるのは出しゃばりというものです。幸福とは何かという問いについても。もっとも,宗教を信仰するものだけが死生観や幸福の意味を知るわけではないことも確かなので,この2つだけに限定するわけにいかないことは付け足しておかないといけませんね。

ともあれ,そのへんの節度をわきまえずに,宗教が科学を自分を正当化する権威のように使うことは,領分を侵してしまっているわけです。ただし,もっと私が仮に宗教の側に立ったとして懸念することは,科学ごときに判定してもらうような教義は,下手をすると学説の取り下げと同時に崩れてしまうだろうということです。

科学の成果の中には,ほとんど不動の位置を獲得しているものもかなりあります。原子論,古典力学あたりはどう時代が変わっても,現在確立している地位を追われることはないでしょう(古典力学がまちがっているから相対論や量子論が出て来たんだろうというツッコミはありえますが,それは議論の仕方の問題です)。しかし,医学や生理学の領域は不確定の要素をたくさん持っており,遺伝情報の発現の仕組みだってまだまだよくは分からないのです。遺伝子のスイッチオンオフの機構だって,たくさんの研究者が世界中でいろいろな仮説を立てて検証している最中のはずです。村上氏の主張がそのまま裏づけられるとは限りません。

そういう未確定なものに権威付けを求めるとしたら,それは宗教としてはあまりにも情けないのではないでしょうか。宗教者はもう少し凛としてほしいものだと思います。

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_ なべまさ [力学にローレンツ変換を採用するのが主流となるまでの経過として電磁気学との整合性をとろうという発想が(背景にあったとし..]

_ なべまさ [> 電磁気学との整合性をとろうという発想が(背景にあった > としても)高速度不変をなんとかしようという事に先行し..]

_ ふるかわ [宗教とかポピュラーサイエンスとかのカリスマ役として生贄にされる人はいないかと,虎視眈々と狙っている人たちに捕まったん..]

_ いしやま [最初は信じていなくても、繰り返し言い続けることで、いつの間にか「自分はこれを信じているんだ」と思い込むようになり、や..]

_ スズキ [一応ご参考までに、村上先生は天理教の教会の子弟です。]

_ こなみ [村上氏はもともと天理教の信者なんですよね。たとえばキリスト教信者の多い国で,物理学者が宇宙の元素生成におけるベリリウ..]

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2007-10-07 読書の秋シリーズ:『眼の誕生』

_ 『眼の誕生ーカンブリア紀大進化の謎を解く』アンドリュー・パーカー

昨年出された本ですが,この夏に読みました(実は「読書の夏」で感想文を秋に書いてます)。カンブリア紀の生物が爆発的な放散したのはなぜか,その理由を動物の眼の進化に求めるという視点から追っていき,著者の主張する仮説を検証していく,その全体像を克明に浮かび上がらせた力作です。

カンブリア紀に,無脊椎動物の種の数が急激に増加したという「カンブリア紀の大爆発」というのは,グールドの名著『ワンダフル・ライフ』で大きな話題になった事実。しかしどうしてそのときに?という疑問は多くの人がもったようです。著者のアンドリュー・パーカーは無脊椎動物がそのころに視覚を獲得したのが,「ビッグバン」の原動力になったのではないかというインスピレーションを得て,実際に検証していきます。この検証のひとつひとつが面白い。たとえば,とっくに絶滅した三葉虫やアンモナイトがどんな色をしていたのかを調べようというわけです。

何億年も昔の生物の化石から体の色を知ることなど,絶対に無理なことのように思われます。たとえば復元された恐竜の色だって,現存するは虫類からの連想で褐色にしたり,最近は鳥っぽい色も使って派手にしてみたりと,想像して色をつけてしまうしかありません。私も(下手に)色素に関する知識を持っていたばかりに,探求の可能性があるなどとは想像もできませんでした。

ところが,アワビの貝殻の内側の光沢は,かなり金属的に見えるけれど,もちろん炭酸塩などを主体とする物質の表面の色でしかありません。光の干渉によって生じる構造色と呼ばれる色です。これは化石の電子顕微鏡観察で調べることができる!色素は化学変化で劣化,褪色するのですが,これは残る。ここでしばらく本を閉じてうーんと天井を見つめてしまいました。

ダーウィンを悩ませ,多くの批判者がもちだした「眼のように精巧な仕掛けが,自然淘汰によって作られるはずがない」という疑問は,今ではほとんど氷解してはいるのですが,パーカーはむしろ眼の進化こそが生物の多様化を生み出したものだとして,論証の武器にしてしまいます。視覚,つまり他の個体を識別する能力がもたらす強烈な淘汰圧が,生存競争を支配する最大の要因になっていくこと,それは生物の多様化をもたらすと同時に,眼自体の進化も促すわけです。眼は必然的に進化するのだというふうに,見方が逆転する。

_ 大きな研究の物語を描く

科学書にはさまざまなタイプのものがあります。科学者が一般向けに書く啓蒙的な解説本にも良書はたくさんあります。また力のある著述家があるテーマをめぐって書いたものもあります。サイモン・シンの『暗号解読』はその手の傑作。しかし,科学者自身が自分の研究をひとつの成果に至るまでを書いた本ほど魅力的なものはないと思います。『眼の誕生』のパーカーは,この本のテーマを追って意欲的に研究を進め,多くの領域を逍遙しながら仮説を追いつめていく,こんな物語を作り出せたのは,力量はもちろんのこと,幸運もあります。生物進化という万人が興味を抱く対象を研究対象にもっていたからこそ,自分の営みが人にも理解できるわけです。分子の構造とか励起エネルギーとかいう一般になじみのないテーマを追って来た立場から言うと,それはうらやましい。

島泰三の『親指はなぜ太いのか』も興味を引きつけて離さない本でしたが,それも人類の進化,初期人類は何を食べていたのかという疑問に,意想外な仮説の提案で答えてくれるという仕掛けでした。

この本は同時にかなり教育的でもあって,進化の理論,色彩とは何かという問題などについて,執拗なまでにていねいな記述を試みています。おそらく仮説への反論を予想して,それを説得するために行った議論がそのベースにあるのでしょう。おかげで,この1冊を読むだけでもいろいろな分野の基本的な知識を得ることができる,なかなか値打ちのある本です。

_ 村上和雄氏に期待したかったこと

今や「遺伝子スイッチオン」を語るだけの人となってしまった村上和雄氏ですが,私が1999年に彼の講演を聴いたときには,彼がライフワークとした高血圧に関わる遺伝子発見の物語として非常に興味深い内容も含まれていました。学生相手の長い講演ということもあってか,研究現場のようすや苦心したことが具体的に描かれ,ひとつの目標を達成することのわくわくする感動がそこにはありました。

ところがその講演の後半に入って妙に観念的,道徳訓話的になり,彼の持論の「心で遺伝子のスイッチをオンオフできる」という話に突入してしまったのです。実はそのとき,村上氏の言説については,私は何も知りませんでした。そんなわけで心を躍らせる研究の話から,とつぜんに人生訓話になってしまったときに相当がっくりしてしまったことを覚えています。

もちろん,体調は精神状態に大きく影響されるものですから,気分を明るくすることでストレスに打ち勝ち,ストレスが発症因子に含まれる疾患(ガンもそう)に対して予防効果があるといった主張は否定できないだろうと思います。その面からの研究も有意義でしょう。ただし,村上氏の主張はそういった因果関係を飛び越えて,一足飛びに心が,そして「サムシング・グレート」が人間の遺伝子に働きかけるかのような内容をもっています。科学的な標題と心の問題としてきちんと切り分けるべき事項とが巧妙に使い分けられているのが,今の彼の行っている活動の姿です。彼が天理教の金看板を背負っていることもその背景にあるのかもしれません。その結果として,「心のあり方を変えて不平不満をいわずにありがとうの気持ちになりさえすれば,世の中はよくなる」と主張する人たちに,いかにも科学的なお墨付きを与えることになってしまっています。

村上氏ほどの業績を挙げることは,どの科学者にとってもそう簡単ではありません。才能と努力と時宜にかなったテーマ,それに運も手伝っての仕事なのです。そのストーリーをしっかりと書いて残してほしいものだと思ったのですが,今のところそのような話はなさそうです。

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_ スズキ [村上先生は今や当教団の顔ですね。遅くなりました、私は天理教の者です。「サムシング・グレート=神」と村上先生は言ってま..]

_ ふるかわ [パーカーの本は私も読みました.本書では眼の進化(と言うよりも眼が引き起こした進化)を取り上げていますが,それに伴い,..]

_  [単細胞の時から光感覚はあるんだけどなー 単に、大絶滅で空いたニッチへの爆発的放散の結果としか思えない。]

_ ふるかわ [視覚と,視覚以外の光感覚は,本質的に異なるんだってこと(視覚について学ぶときの基本です)がわかっていないと,パーカー..]

_ viagra [この間も俊太郎の詩をお http://www.stlouisbusinesslist.com/business/5..]

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2007-09-27 ないとはいえないという言明

_ ないという証明はできないか

ちょっと毛色の違う話を。たとえば「テレパシーはある」ということを主張する人はたくさんいます。あるいは「死んだ母の声を虫の知らせで知った」といったバージョンもあります。念力(サイコキネシス)でもかまいません。

この種の話に対して,慎重な言い方を選ぶ人は,「そんなものはあり得ない」という言い方をふつうしません。理由は「ないことの証明は不可能だからだ」というわけです。

ところが,この種の言い回しを受け取る側が,「なんとか先生もないとは言われなかった」といって,そのまま「だからあるんだ」に直行するパターンがよくあります。もちろんそれは間違っているのだけど,信じたい人にとっては一縷の望みの糸をいともたやすく王道に化けさせる力があるようなのです。そういうのを見ていると,もう少ししっかりと,「それはあり得ない」と言ってしまった方がいいことも多いのではないかとよく思います。

そこで私が考えるのは,現在分かっている物理の成果からみて,「サイコキネシスはあり得ない」,「死者が生者に実際に関与することはない」と言ってしまったほうがよいのではないかということです。

ここで言っている物理というのは,物質の構成粒子に間に働く相互作用の種類は基本的に4種類,電磁気力,重力,強い相互作用(核力),弱い相互作用しかないという知識をさしています。ビッグバンの初期のような条件でもないかぎり,我々の知っている世界でものとものの間に働いている力はこれ以外にはない。言葉もまなざしもスキンシップも結局のところこれらの相互作用に支えられているわけです。分子間力もクーロン力の現れに他ならないことを考えると,我々が知る現象のほとんどは電磁気的相互作用が主に働き,それと重力も影響はするということでたいてい尽きている。

さて,これを積極的に活用すると,たとえば死後の人が今生きている人になんらかのはたらきかけができるかというと,それはありえないだろうと言える。多少は歯切れのよい言明として取られそうです。

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_ apj [>「あっちの世界」の住人=Y氏の応援団=ダウンの方々  じゃなくて、ニューエイジ系の人というか、スピリチュアル系の..]

_ J.-L. L. [いやいや。あっち(Y氏)の世界の住人になると、もうそこからは出られないという意味で、なかなかの比喩だったはず]

_ apj [ああ、実は「トンデモ事象の地平線」なるものがあるんじゃないか、って話ですね。でもって、地平線越えて向こうの世界に行く..]

_  [サイコキネシスってのは、以前流行っていた「手で風を起こして紙を動かす」とか「体温で上昇気流を起こす」とか「静電気」と..]

_ Vfpzynxu [uooQsJ この間も俊太郎の詩をお http://www.stlouisbusinesslist.com/busi..]

_ viagra [この間も俊太郎の詩をお http://www.stlouisbusinesslist.com/business/5..]

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2007-09-25 ランドリー・リング

_ ポリエチレン製の赤いドーナツ

以前話題にしていたランドリー・リングを人から譲り受けることができました。「地球にやさしいお洗濯/ランドリー・リング」というキャッチコピーで,このリングを洗濯機に入れて衣類を洗えば洗剤がいらないというものです。写真をお見せしましょう。 表側 裏側 赤いドーナツの形をしたリングで,材質は高密度ポリエチレンです。灯油のポリタンクに使われているのと同じプラスチックですから,材料的には安っぽいものです。振ると水のような液体がちゃぽちゃぽと音を立てています。説明書を読むと,これが例のストラクチャーウォーター(組織水)というものらしい。今日は適当な瓶がないので,後日こいつに穴をあけてサンプル瓶に移して調べてみましょう。たぶんただの水とか塩水でしょうが。価格は10,290円だったそうです。
ともあれ一見して分かることは,このポリエチレン容器に入っている「水」は,洗濯機に入れたところで,いっさい何もするはずがないということです。プラスチックの壁をへだてて入っている内部の水が外の洗濯槽の水になんらかの影響を与えて,そのことで汚れが落ちるなどというのは,どう考えてもあり得ません。せいぜい水のなかで衣類と一緒に動くときに,ちょっと力を衣類に与えるぐらいのことでしょう。評価については,まずはそんなところで。

_ インチキ商品はめずらしくない

この例にかかわらず,世の中にインチキ商品というものはいくらでも存在します。古来有名なガマの油売りだって,たいした効能もない軟膏を香具師の巧みな口演で売りつけていたわけですよね。ガマの油の口上売りだったら私は喜んで見物料として1個買ってあげるでしょうけど。その意味では定番のインチキ商品のひとつであると思います。

「科学」を標榜(ひょうぼう)する宣伝のやり方も,日本ではもう100年の歴史のある商売の手管といっていい。「最新科学応用」をうたう広告は明治時代には登場しているのですから。いつも力説することですが,「科学的に●●だから」というセリフをみたらむしろ怪しいと思って,眉につばを付けましょう。「なんとか博士が推奨する」というのはいちばん怪しい。「欧米で大ヒット」もよくある。このリングも「全米で400万人」だそうです。いつまでも数字が変わらないところが哀しい。ヒットしたんだったらあっという間に1億にならなくては。

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_ 技術開発者 [こんにちは、こなみさん。別なところにも書いたけど最近いくつかニセ科学関連の相談を受けました。私の場合は消費者からの相..]

_ なべまさ [これが「組織水云々」とか言わずに「攪拌効果が向上」とか「洗濯物のからみつきを防止」程度の能書きで、値段も100〜20..]

_ Rsgozsqv [Oi1nF5 この間も俊太郎の詩をお http://www.stlouisbusinesslist.com/busi..]

_ viagra [ http://www.stlouisbusinesslist.com/business/5021837.htm?..]

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