小波秀雄
面白い話を聞きました。 水の中に「あべこべのシャボン玉」が作れるというのです。 さっそく実験してみました。
上の写真を見てください。これは水中に沈んでいる「シャボン玉」です。
中に空気がつまった気泡ではありません。
その証拠には,泡の表面が光の干渉で色づいています。下の写真だともっとよくわかります。
まるで本物のシャボン玉のように,きれいに色づいて光っています。これは二つの反射層が非常に薄 い間隔を隔てて平行に位置しているときに起きる光学現象です。ただの気泡ではこんなことは起こり ません。だいたい,気泡だったら,そもそも水の中に沈んでいたりするはずがありません。 そう,これは水の中にできた球形の薄い空気の膜が作る「あべこべシャボン玉」あるいは 「反シャボン玉」なのです。英語では Antibubble といいます。というか,英語の方 が先にあって,ここで書いているのは私がとりあえず作った訳語です。
上にはいくつかの「泡」が見えます。しかし「反シャボン玉」が水面のすぐ下に浮いている 場合には水面はほとんど平らで,しかも平行な空気層もほとんど光を屈折させないために, 容器の底がゆがまないままで見えています。「本物の泡」のほうは,水面が盛り上がるために,周囲に見える底の 像がゆがんでいます。
この「反シャボン玉」はどうやって作るのでしょうか。道具立てはそんなに難しいことはありません。用 意する道具は大き目の水の容器(ここではステンレスのボウル)と,水を細くゆっくりと注ぐことの できる水差しのような道具,それと水道の蛇口,台所用洗剤。これで全部です。
まずこんなふうにして,容器に水があふれるまで蛇口から注ぎます。水が細く連続した流れになるよ うにして,端のほうにきれいに注ぎます。 水面に汚れがないことは実験成功の大事な条件ですから,実験の途中でもときどきこのようにして 水面を清浄に保つようにしてください。
水をあふれさせたら,洗剤を少量だけ(2,3 mL) 加えて,泡を立てないようにかき混ぜて溶かします。 その水の一部を水差しに移します。ボウルのほうにはまた蛇口から水を入れてあふれさせます。 これで準備は終わりです。
水差しから水を注ぎます。高さ 2 cm ほどの低いところから,きれいな流れを作るように注ぎ込み ます。気持ちとしては「一気に,しかしきれいに」という感じです。このコツさえつかめば簡単です。 あとは動画を見てください。
こんなことで遊んでいると,面白くてついつい我を忘れてしまいます。 「なんてお前はヒマなやつなんだ!」という声も聞こえてきそうです。慣れてますから なんとも思いませんが。
しかし,この現象については,海外ではすでに科学的に非常に興味深い追及の対 象になっているようです。 それは次のようなことを考えただけでも理解できます。
「反シャボン玉」の「膜」は,可視光の干渉を引き起こすほど薄い空気の層です。 どうしてそんな層が比較的安定に存在するのだろうか。素直に考えれば あっという間に2つの水面のどこかがくっついてしまって, 膜は消失しそうです。何がそれを妨げているのだろう?
丸い枠にシャボン液を着けてからあおぐように動かして大きなシャボン玉を作るのがありますね。 この「反シャボン玉」のでき方も,そんな感じです。でもシャボン液の膜が閉じるほうは 想像がつくのですが,こっちのほうは私にはどうにもイメージができないのです。 すごく不思議。
この不思議な球はそこそこ安定です。大き目のもののほうが寿命が長いようにも 思えます。この寿命を決めているのは何だろう。そして臨終のときには何がどうなるのだろうか。