京都はもちろん有名な観光地が多いし,定番のお寺なんかもあるわけですが, そういうのは外して,気楽に楽しめる場所を紹介しましょう。 ただし,これは私の生活圏内でのリストにすぎませんので, 場所はきわめて限られています。
小波秀雄
【目次】 [岡崎周辺] [白川沿いに歩く] [祇園] [三条・錦] [大原] [実相院,円通寺] [鞍馬・貴船]
地下鉄東西線の蹴上(けあげ)駅から 徒歩5分ほどで南禅寺。南禅寺の奥に明治時代に建てられた疎水の 高架橋があります。そこから境内を歩いて庭園,山門などを見学しながら 西へ出て行き,疎水記念館(小さいが悪くない)に立ち 寄ってのち疎水に沿って 西へ歩けばすぐに岡崎公園に着きます。
岡崎公園のみどころは平安神宮,国立近代美術館,京都市美術館などなど, 京都を代表する文化施設です。 平安神宮は庭園と池。この池には琵琶湖疏水の水を取り込んでいるのですが, 取り込み口からは外の魚が侵入できない構造になっているために, 戦前に池を作ったときに住み始めた琵琶湖の固有種が保存されている という貴重な自然遺産でもあります。
近代美術館は常設展示でも高いレベルのものを見ることができます。 市美術館は建物そのものに雰囲気あり。公園の北西隅にある細見美術館は, 建物は小さいがものの 良質の日本画展示で知られています。中のレストランで休憩,食事もよろしい。 この 一帯は京都最良の場所にひとつ。ゆっくりそぞろ歩きを楽しみましょう。
岡崎公園を大鳥居の南の出口へ。交差点をわたってから右に折れると, 白川が始まります。家並をくぐって流れる川に沿って1kmほどを祇園まで 歩いていくのが何よりもお勧めです。 流れの上に枝を広げる柳の木,小さな子と散歩するお母さん, 買い物籠を下げたおばちゃんの話し声が聞こえる 小さな商店街など, 道々現れてくる京都の庶民生活のひとコマを,まるで懐かしい映画でも 見るように楽しむことができます。
殊にわたしが好きなのは, 折々の花を鉢植えにして軒先に並べている家に出会うことです。 狭い町の生活の中でも四季の移ろいを楽しむ町衆の心に触れて, うれしい気持ちになれます。
岡崎から祇園への概略の地図岡崎から白川沿いに歩を進めていくと,いつの間にか三条通を越えて南に 運ばれていきます。西向きに,つまり鴨川に向かう方へと向きが変わります。 東大路を越えたらそこが祇園。
祇園も目抜き通りではなく路地を歩くのがいいのです。白川が広小路, 通称花見小路にぶつかったところで北に一本目の道が古門前通, 引き返して南の通りが新門前通,古美術,陶器の店などを冷やかして歩 くのも目の楽しみです。
新門前あたりから縄手通を南に下がると,さっき別れた白川が
あります。上流に向かって50mほどの短い道を歩けば小さな神社が見つかります。
祇園で商う人や芸妓さんたちの信仰を集めている辰巳神社です。
このあたりが祇園新橋です。
祇園のこのあたり,いつの季節もそれなりに
悪くありませんが,とりわけ桜の頃がよろしい。
京都で桜というなら,祇園新橋は辰巳神社の,この界隈抜きには
決して語れません。満開の桜と白川の流れ,その流れの向こうの料理屋の灯り,
石畳の上を行き交う人々。舞妓さんが歩いて来ると,そのまわりで
人の波が動いてカメラのフラッシュがあちこちで光ります。
祇園の縄手小路を下がると四条通。通りの向かいには南座があり,
右に曲がって東に歩けば八坂神社と丸山公園に行き着けますが,かなり時間を
見ておかないといけません。それよりは四条通から花見小路を南に入って
祇園歌舞練場,建仁寺あたりまで歩いてみるのが手軽ではあるます。
ただしこの広小路は,こてこてに作った京都風の観光用路地という感じで,
いまひとつ町のぬくもりや手垢のついた気安さには欠けるうらみがあります。
町中のいろいろな店を冷やかしたり,洒落たスポットに入ってみたり
しながら,京都の町の風情を楽しもうというコースです。
地下鉄東西線の市役所前駅で降りると東西の道が御池通。
あの有名な本能寺はすぐ近くにあります。そこから寺町通を下がっていくのが
上手な歩き方です。
御池から三条までの寺町沿いには知る人ぞ知る民族楽器の店コイズミ,
江戸時代からの和物文具の鳩居堂,
漬物屋の酉市(とりいち),それに何軒かの画廊と画材店があります。酉市は
竹の子の季節には掘りたての竹の子であふれ,秋には丹波栗と松茸で
一杯になるので,ちょうどそこに出くわした人は幸運かも知れません。
ただしいずれも超高級品揃いで安くはありません。私は一度
丹波栗を遣い物に求めましたが,みごとな粒ぞろえの逸品で,受け取った人が
感激していました。
写真は竹の子の季節に撮影したものです。
寺町を下がって三条通に差し掛かったら,右手に折れて西の方へ 入っていきましょう。そこからすぐのところ,左手に見える古い石造の建物は かつて毎日新聞が使っていたビルで,今はカフェ・アンデパンダンという カフェが地下にあります。カフェに入ると,古いビルの大きな地下室の 殺風景な造りをそのままにした店内で若者たちが話し込んでいる姿があります。 美術系の人が多いようで,若いアーティストたちのたまり場の匂いがなつかしい。 1階にある石壁の部屋の展示スペースでは,現代アートがよく 登場しています。ちょっと立ち寄ってみていいものに出会えたら,思わぬ拾い物を した気分。
そのまま西に進んで,京都文化博物館もあんがい見逃せないところ。展示がという よりは旧日銀の建物をそのまま残した別館(阿蘭陀館というらしい)の中に入ってみたり,個性的なショップを覗いたりと 楽しめます。客はあまりいないので落ち着いて休憩も。
文化博物館を出たら南に下がり(高倉通),適当なところ,たとえば 六角通で東に入って直進していくと,寺町,新京極とふたつのアーケード街に 出られます。どちらかを南に下がっていけば数分で錦市場と交差します。 この有名な錦市場,実際のところ観光客と高級料亭向けの品が多く, 普通の京都市民はあまり 買い物をするところではないのです。しかしそれだけに京野菜や 漬物,いろとりどりの麩や香辛料など,土産になりそうなものが豊富にあって,目でも楽しめます。私はよく七味唐辛子を買っています。
錦市場を端まで行ったら地下鉄の烏丸(からすま)四条駅,阪急烏丸駅, あるいはずっと東の京阪四条などから次の場所へ。交通の便はしごく便利で, ついでに二条城見物を兼ねるコース設定も可能です。
京阪出町柳駅で降りて大原行きのバス,あるいは叡山電車に乗って野瀬(やせ)からバスに乗り継ぎ。叡電はちょっと懐かしい雰囲気かも(私は毎日 通勤で乗ってますが)。もちろん大原は三千院に行かなければ意味がありません。 建礼門院が,壇ノ浦の合戦で沈んだわが子安徳天皇の菩提を弔った 寂光院は,2000年の春に放火されて焼け落ちてしまいましたが, 2005年の夏に 再建されています。もの寂びた古寺の佇まいがかつて人気を集めていた この寺が,建立当時の鮮やかな寺院としてよみがえったのは, 喜ばしいことではありますが,惜しい気持ちも残ります。
大原からさらに北に阿弥陀寺があります。京都では最北の寺のひとつで, 険しい山に作られた修験の寺です。創建者が即身仏となった石棺が 岩の窪みに安置され,寺の古さや辺りの渓谷とあいまって他の寺にない 霊場の雰囲気をもっています。大原からはタクシーでいくかバスで行くかどちらか。
最近テレビでなんどか紹介されてずいぶんと有名になってしまった実相院ですが,
もともとは平安時代以前からの格式の高い寺のようです。
小ぶりながら石庭と池のある内庭とが美しく,
また歴史的な資料も見られます。ついでに近所の岩倉具視の住居などを
見たり,岩倉川沿いに歩いてみるのもいいでしょう。
叡山電車の岩倉駅で降りてバスに乗るか,地下鉄国際会館で実相院行きの
バスに乗るかするのが通常のコースですが,
岩倉駅の西側の方から川沿いに田んぼや山の脇を北に15分ほど歩いていくのが
もっとも気持ちのよいコースでしょう。
写真はその道すがら撮ったものです。
円通寺は叡山電車の精華大学駅から歩いて南に10分ほどのところですが,思いもかけない 深山の雰囲気があります。 比叡山を借景にした庭園が有名で,殊につつじと紅葉が見事です。 ただしこの和尚は 客にやたらに話しかけたがる悪癖があり,適当に逃げた方が疲れなくてよいかも しれません。
出町柳から
叡山電車で鞍馬まで30分。鞍馬寺に登って奥の院から貴船まで山越えの道を歩く
のが間違いないコースです。
まず
鞍馬寺山門に入ったらーブルカーに乗るか,あるいは
坂道を登るかして,本殿に向かいます。ただしケーブルカーに乗っても
登りの道をかなり歩かないといけません。
本殿では地下に入ってみよう。真っ暗にしてあるが,よく見ると
幽かな明かりの室内を歩けるようになっている。種明かしは避けますが,ここは
ちょっと怖いところなので,小さい子供をつれていってはいけません。
本殿の脇にある宝物殿は一風変わったところです。1階には 鞍馬周辺の植物や動物の標本がぎっしりと展示され,珍品もあって 楽しめます。2階に上がるとこの寺に伝わる歴史的な遺物や資料の展示です。そこで3階 に上がってみると,畳の大広間の周りに仏像がずらりと並べられていて, これがなかなか壮観。平安から鎌倉にかけての様式のさまざまな 仏像で,近くまで寄って細部を見るのもよし, 畳に足を投げ出して罰当たりな格好で菩薩像と対するのも悪くありません。 あまり人もいないし,足の疲れもとれて,たった200円の入場料でこれは お値打ちです。
宝物殿の奥に,本殿境内から奥の院への入り口があります。
そこを通過していくと鞍馬の森を抜ける
山道です。義経が修行した谷や木の根道,岩に囲まれた奥の院などを
通るのですが,なんといっても深山幽谷に千年を超えて生きている樹木の
間を歩いていけることが最大の楽しみです。
道は下りが多いので,疲れることはさほどありません。
山を越えて谷川を渡ったところが貴船です。 貴船神社は奥の院と中宮,表と2つの社からなり, 手前の表の社は縁結び,奥の院は縁切りらしい。便利なところですね。 夏は非常に混雑する貴船の料亭ですが,それ以外は適度な人の入りで, ふりで行っても飲食ができます。ただし結構なお値段なので, 鞍馬駅前で食事してから行動するほうがいいかも知れません。 貴船からは山道を1kmほど下って,叡電貴船駅から帰途に就くことになります。