IOTS2016に参加しました

情報処理学会に「インターネットと運用技術研究会」(略称:IOT研究会)があり,毎年「インターネットと運用技術シンポジウム」(略称:IOTS)を開催しています.IOTSでは広くインターネットと運用技術にをテーマとした研究発表や招待講演,パネルディスカッションなどが2日間にわたって行われ,同時にIT企業による製品展示やデモンストレーションも実施されます.

本学部教員の宮下や中山がIOT研究会に所属している縁で,2009年(第2回)以来,このIOTSにネットワークを学ぶ学生が参加し,会場のネットワークを構築・運用しています.昨年からはこれを人材育成の場と考え,複数大学から学生を募集して作業することにしました.今年のIOTS(IOTS2016)には,大分大学,広島大学,広島市立大学,京都女子大学の学生や大学院生が計7名(うち3名が女性)集まり,会場ネットワーク構築と運用に従事しました.本学部からは宮下ゼミ3回生の山内佳奈さんと山崎友梨奈さんが参加しました.

実施のおよそ1ヶ月前に連絡用メーリングリストが作られ,ネットワーク担当の実行委員や学生さんが様々な情報交換をしながらネットワークの設計を進めました.そして開催前日に現地(福山大学)入りし,会場設営と同時にネットワーク構築を開始しました.

ルータ設定中
ルータ設定中

本学部の学生さん以外は工学部情報系学科や情報系研究科所属ですが,実際のネットワークを構築するという点では専門や大学の垣根を越え,全員でUTPケーブル作成やルータの設定など協力していました.特に今年は前夜祭に学生さんが全員参加して仲良くなっていたのが印象的でした.

UTPケーブル作成失敗
UTPケーブル作成失敗

今回はメイン会場を本学部と大分大学の学生さんで,企業展示会場を広島大学と広島市立大学の学生さんで担当し,それぞれが事前に作成した設計にしたがってネットワークを構築しました.いくつか小さなトラブルがありましたが,大きな問題はなく,2日間にわたり150人ほどの来場者にネットワークを提供することができました.また,2日目夕方には「学生パネルセッション」として,今回の構築作業に参加した学生さんに体験を語ってもらい,会場の研究者やエンジニアと意見交換する場を設けました.

学生パネルセッション
学生パネルセッション

いわゆる「イベントネットワーク」(短期間のイベントのためのネットワーク)を構築することには,長期間にわたって利用される設備としてのネットワークを構築するのとは違う難しさや楽しさがあります.このような展示会も含むイベントの場合は,最新技術や最新機器に触れる貴重なチャンスでもあります.学生さんたちには今回参加したことでたくさんのことを学び,将来に活かしていただきたいと思っています.

ICTトラブルシューティングコンテストに参加しました

こんにちは.宮下です.

今回で6回目を迎えるICTトラブルシューティングコンテストが,8月27日と28日の2日間に亘り,NTT西日本をプラチナスポンサーとして大阪で開催されました.このコンテストはICTシステムの運用技術の中でも特に難易度の高いトラブルシューティングのスキルを競うもので,高専,大学,大学院の学生がチームを作って臨みます.トラブルシューティングのためのICT環境の構築や運用,コンテストのための問題作成や当日の運営なども実行委員の学生たちが担当し,ICT企業の「大人」たちはこれに協力しながら温かく見守るという体制で開催されています.

今回のコンテストには15チームがエントリーしました.工業高専や工学部,大学院生など情報系の学生が集まる中,ひときわ目立つ「現代社会学科」という名前,しかも唯一の女子チームでした.

問題に取り組んでいます
問題に取り組んでいます

他のチームには女子がいないか,いても1名という,とにかく女子率の低いコンテストの中でこれは目立ちました.しかしこういう社会を変えていくために本学部は情報系に注力しています.いずれ男女比が1:1のコンテストになってほしいものです.

今回参加したのは本学科の情報プログラム科目「応用ネットワーク」を受講している3回生3人で作ったチーム「PC小町」です.「応用ネットワーク」では,このコンテストでも使われているCisco社のネットワーク機器を利用した実習を行っています.しかしトラブルシューティングそのものを授業で扱うことはないので,彼女たちは夏休み中に勉強会を開いて準備をしていました.

3人で知恵を出します
3人で知恵を出します

コンテストは2日間,朝から夕方までトラブルシューティングを実施します.チームごとにスイッチ1台とルータ2台で作られたネットワーク,IP電話1台と問題に応じてクラウド上にVM(仮想化されたサーバ)などが用意されます.これらを利用した問題(何らかの不具合のあるシステムやサービス)が示され,その不具合を解決して原因と解決手段を報告しそれが採点されるという形で進められます.問題はVPNやIP電話,WWWサーバ,CloudStackによる仮想基盤など異なるレイヤにわたる幅広い知識とスキルが求められるものでした.

1日目の終わりには懇親会,2日目の夕方にはスポンサー企業によるセミナーが開催され,各チームの学生どうしや学生と企業の交流が盛んに行われました.スポンサー企業から来ている人の中には過去のコンテストに参加したことが縁で就職した方もいました.私もたくさんの企業の方々とご挨拶しましたし,皆さん一様に女性エンジニアを求めてらっしゃいました.

最後には1位から3位までのチームが表彰され,それぞれ盾や賞金を受け取っていました.残念ながらうちのチームは入賞できませんでしたが,参加賞としての各社ノベルティや書籍,そして楽しかった思い出ともっと勉強しようというモチベーションを手に会場をあとにしました.以下,今回参加した3人のコメントです.

井上さん:「最初は不安や心配なことが多かったですが、出場したことで普段することができない経験ができました。問題は難しかったですが、こういうトラブルが現実に起こり得るということを学ぶこともできました。自分の知識不足を実感しましたが、楽しんでコンテストに参加できたので、やってみてよかったなと思います。」

新谷さん:「問題に苦戦し、自分の知識の少なさに改めて気付かされました。しかし、今回出場したことで、新たな気づきもありいい経験になりました。なりより、楽しかったので出場してよかったと思います。」

山崎さん:「コンテストのために調べて初めて知った技術や、講義で使っている機材でも、あらためて「この子、こんなことまでできたんだ!」のような発見がたくさんあり、とても楽しかったです。でも、問題はとても難しかったので「もう少しわかるようになりたいな」という悔しさもありました。最初は出ることに迷いもありましたが、出てみてよかったと本当に思います。」

最後になりましたが,ICTトラブルシューティングコンテスト関係者の皆さんお世話になりました.ありがとうございました.

追記:今回のコンテストの成績が後日届きました.それを見た学生さんたちは「案外,イケてた」という印象だったようです.また,「もう少し粘っていればもっと上が狙えた」という悔しさもあり,「できればもう一回出たい」という気持ちが芽生えているようでした.

PHPカンファレンス関西ネットワークお手伝い

こんにちは.宮下です.

先日,PHPカンファレンス関西が大阪はブリーゼホールで開催されました.こういう催しでは会場内にインターネットへの接続性を用意することがよく行われます.PHPカンファレンス関西でも,無線LANによる会場ネットワークが用意されました.今回,このネットワークの構築と運営,撤収などの作業を見学する機会に恵まれましたので,さっそくゼミの学生さん(3回生)と一緒に行ってきました.

当日(7月16日),スタッフは朝早く集合します.ネットワーク構築以外にもスタッフはたくさんいて,それぞれ会場設営や受付の準備など担当の作業を短時間でてきぱきとこなします.ネットワークスタッフは7〜8人で,会場内への無線AP設置やそれらを接続する有線ネットワークの設定,インターネットとの出入り口になる機器の設定などを事前打合せの通りに進めていきます.しかし事前設定の通りにコトが進まないのが世の常で,いくつかのトラブルを解決しながらの作業となりました.

無線APとスイッチの設置
無線APとスイッチの設置

私と学生さんは無線APの設置などちょっとした作業を手伝いつつ,全体の流れを見学していました.Cisco製の無線APはWLCという仕組みを利用して統合管理することが可能ですし,大学での授業にもこのような実習を取り入れてみたいと考えつつ,無線APを壁に貼り付けたりネットワークトポロジ図と目の前の配線を見比べたりしていました.

会場ネットワークが安定運用フェーズに移ったら,我々のお仕事が始まります.実は,今回は見学だけのつもりだったのですが,ネットワークスタッフのリーダーから「どうせなら」ということで懇親会場のネットワーク構築というお仕事をいただいていたのです.

無線AP設定中の学生さん
無線AP設定中の学生さん

さっそく無線APとスイッチを拝借して,学生さんと一緒にネットワーク構築のための設定開始です.スイッチは授業でもよく利用しているので,学生さんに大雑把な指示をして設定してもらい,私は無線APの設定をマニュアルと首っ引きで始めました.無線APから期待通りの電波が吹き始めた頃,スイッチの設定も完了しました.今回は無線APを2台利用するので,1台目の設定を元に,2台目は学生さんに設定してもらいました.学生さんには生まれて初めての無線APの設定でしたが,すんなり理解して対応してくれました.

設定完了した機器を懇親会場に設置して,思い通りのネットワークができたことを確認して作業終了です.あとは懇親会の間,ネットワークが切れたりしないか監視して過ごします.そして,懇親会終了時にネットワーク機器も撤収します.

「現代社会学部 現代社会学科」という「まるっきり文系」の学生さんがネットワーク機器の設定をしているという光景はやはり他のスタッフたちの関心の的のようでした.また,彼女自身がとても楽しそうに設定作業をしていることもスタッフには「受けた」ようです.彼女は授業やカリキュラム,ゼミのことなどいろいろ質問を受けながら楽しく過ごせたと言っていました.「授業で実習したときには「これ,実際にはどんなふうに使うのかな」と思いながらだったけど,今日それがすごくよくわかりました.すごく楽しかったです!」という感想をもらって,私も大満足でした.

今回はイベント時の無線ネットワーク構築・運用のノウハウを吸収できればと思い見学を申し出たのですが,思いがけずいろいろと手伝うことができました.今回は急な話でタイミングが合わず学生さん1人しか参加できませんでしたが,また機会があればたくさんの学生さんと経験を共有したいと思います.今回,快く受け入れてくださったPHPカンファレンス関西スタッフの皆さま,ありがとうございました.

受賞!

私事(?)ですみません。

情報処理学会インターネットと運用技術研究会(略称IOT研究会)というのがあります。数百人の会員を抱える研究会です。その名前の通り、インターネットに関わることやネットワークの運用技術全般についての研究者が集まっています。

このIOT研究会では、1年間を通じて研究会で発表された論文(年5回の機会があり、1回につき10〜20本の発表があります)の中から、社会に役立つ運用技術のベストプラクティスを選定して「藤村記念ベストプラクティス賞」を授賞しています。この賞はIOT研究会の前身である分散システム/インターネット運用技術研究会(略称DSM研究会)の主査であった藤村直美先生(九州大学)の情報処理学会フェロー就任を記念したもので、昨年度発表された論文を対象として制度が始まりました。

今回、その栄えある第1回受賞論文のうちの1つとして、下記の論文が選ばれました

中山貴夫,宮下健輔「京都女子大学におけるサーバ仮想化基盤の構築」

これは平成28年3月に開催された平成27年度第4回(通算第32回)研究会で発表されたもので、題名の通り本学情報システムの更新にあたりサーバ仮想化基盤を構築した経緯をまとめたものです。中山先生と私は本学の情報システムの管理運用を長く担当しており、情報システムセンターという事務部署と協働して日常的な運用やこのような機器更新をしています。今回このような賞をいただいたことは大きな励みとなります。この場を借りて情報システムセンターをはじめ関係者各位に感謝する次第です。

本学図書館は情報処理学会と契約していますので、本学の学内ネットワークから上記論文にアクセスすると無料で読むことができます。

KOF勉強会

長い間サボっていてすみません。これからまたぼちぼち更新していきます。

もう旧聞に属する話題ですが、去る4月30日(土)に開催されたKOF勉強会で宮下ゼミ4回生の坂口さんと冨永さんがプレゼンしました。KOFとは関西オープンフォーラムのことで、毎年11月に大阪南港ATCで開催されているITイベントです。このKOFに関することをネタにITの勉強をしようという勉強会が今年から不定期に開催されていて、彼女たちはその講師としてプレゼンテーションを行いました。

今回の勉強会のテーマは「ネットワーク」。彼女たちの講演も「KOF会場ネットワークのできるまで」というテーマで行われました。KOFでは出展するユーザグループや企業、個人のため、会場にインターネットへの接続環境(会場内LAN)を用意するのですが、その設計、構築、運用から撤収までを京都女子大学現代社会学部の学生が中心となって実施しているので、そのことをまとめた講演でした。

ネットワークについては、現代社会学部スキル科目「コンピュータ・ネットワークI」「コンピュータ・ネットワークII」および情報プログラム科目の「応用ネットワーク」「ネットワーク運用」と順を追って学ぶことができます。これはシスコシステムズというネットワークベンダが主催するシスコネットワーキングアカデミーという国際的なカリキュラムに沿って開講されている科目です。KOFのネットワークに関する作業はこれらの科目を履修している学生たちを中心に数名が毎年担当しています。

坂口さんと冨永さんは昨年のKOF2015での会場ネットワーク構築の中心的な役割を果たしました。勉強会では、10月中に前年度のネットワーク担当だった先輩から引継ぎを受けて設計を始めたこと、イベント前日まで教室でリハーサルを繰り返したこと、当日の様子や後片づけなどを振り返りつつ、ネットワーク運用のポイントや大学生が担当することの意義などについて語っていました。勉強会はKOF関係者を中心に大勢の参加があり、和やかな雰囲気でした。

kof勉強会(4月30日)
kof勉強会で講師を務める坂口さんと冨永さん

今年のKOFは11月12日(金)13日(土)に大阪南港ATCで開催されます。今年も本学部の学生を中心としたメンバーで会場ネットワークの面倒を見る予定です。ぜひお越しください。