情報系業界・職種研究ワークショップを開催しました

こんにちは.宮下です.暑いですねぇ.

開催からちょっと時間が経ってしまいましたが,7月12日に情報系業界・職種研究ワークショップを開催しましたので報告します.これは昨年度に引き続き2回目の開催になります.所謂「IT企業」に何社か集まっていただき,学生のグループがその会社の業種やその中の人の職種についてインタビューし,最後にそれらをまとめて発表する,というものです.また,学生たちには1週間前くらいに事前学習ワークシートを提示して,業種や職種についてWWWなどで調べてもらいました.

今回は4つのIT企業の方々にお越しいただけたので,30人弱参加した3回生を4つのグループに分けました.グループごとに各企業を担当して,インタビュー調査を行います.企業ごとに職種をひとつ指定していただき,その企業の業種とともにその職種についても調べます.実際にその本人が目の前にいるので,WWWサイトや資料などではわからない細かいことや本音の部分にも迫れます.

会場になったS207教室は教室の壁3面がホワイトボードになっているので,調査結果をまとめてポスターを作るのにうってつけでした.学生たちは大きなホワイトボードに3色のペンでそれぞれ調べたことをまとめて文字や図表で表現していました.最後にグループごとに調査結果を発表し,その企業の人たちに講評をいただいて終了しました.

参加した学生は,今回のワークショップが自分のキャリアを考えたり就職活動の準備をしたりするのにとても役立ちそうだ,と言っていました.ワークショップにご参加いただいた各企業をはじめ関係各位に感謝します.ありがとうございました.

学生奨励賞を受賞しました!

こんにちは,宮下です.

うちのゼミの大学院生の上續さん(M2)が7月4日に情報処理学会インターネットと運用技術(IOT)研究会で研究発表し,学生奨励賞を受賞しました.学生奨励賞は,学生としてIOT研究会に参加し,インターネットと運用技術に関する将来性豊かな発表を行ったことに対して授与される賞です.宮下ゼミとしては,3月に学部生の志智さんが受賞したのに続き今年2度目となります🙌

学生奨励賞授賞式の様子

上續さんは「過去の履修登録情報を利用した履修科目推薦システムの提案」というタイトルで研究発表を行いました.これは彼女の修士論文のテーマである「履修科目推薦システム」を開発するにあたり,一般的なECサイトや動画サイトなどで行われているような手法を応用することについての議論をまとめたものです.発表後には数件の質問やコメントがあり,質問には彼女本人の言葉で的確に回答していました(そのため,会場にいた指導教員(宮下)はそれを眺めているだけで良かったのでしたw).

上續さん,おめでとうございます.これからもがんばって研究を続けてください.

アンチサイバークライムカフェに参加しました

こんにちは,宮下です.ご無沙汰しています.

少し前ですが,5月13日(土)京都府警察本部サイバーセンターのイベント「アンチサイバークライムカフェ2023」にゼミの3回生たちと参加してきました.このイベントは京都府警察本部に新しくできたサイバーセンターと立命館大学情報理工学部の穐山先生が主に企画したもので,高校生や大学生が集まって情報セキュリティに関するアイデアを競うものです.2019年まで毎年末に開催していたサイバー犯罪対策探究会の後継イベントにあたります.

この日は京都すばる高校や京都産業大学などとともにうちのゼミの3回生が参加し,会場のイオンモール京都に40名ほどの生徒・学生が集まりました.サイバーセンター長や京都府警察ネット安心アドバイザーのお話を聞いた後,5〜6人ずつのチームに分かれてアイデアソンが始まりました.まずはアイスブレイクで仲良くなり,昼食を一緒に食べたりしたチームもあったようです.午後からはアイデアソンの本番です.中高年向けのサイバー犯罪被害防止の啓発ポスターやキャッチコピーなどについてチームごとに話し合い,最後にはスライドを使ったプレゼンテーションを行いました.

スポンサーである株式会社コアと株式会社カプコンからご講演をいただいている間にプレゼンテーションの審査が行われ,最優秀賞,優秀賞,アイデア賞の3チームがそれぞれ表彰されました.うちのゼミの3回生はちょうどチーム数と同じ人数参加していて,各チームに1人ずつ入っていたので,どのチームが表彰されても私は嬉しいという幸せな状況でしたw

イベント終了後に何人かの3回生に話を聞くと,とても楽しかったというだけでなく,他の高校や大学の人と話し合うことですごく刺激されたと嬉しそうに話してくれました.学生さんたちにとって貴重な経験になったと思います.関係者の皆さんありがとうございました.

イベントの様子はNHKのローカルニュースで放映されました.下記のリンクはいつまで有効かわかりませんが,書き添えておきます.

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kyoto/20230514/2010017283.html

奥村美生さんが情報処理学会第85回全国大会 学生奨励賞を受賞

現代社会学科情報システム専攻4年生(丸野ゼミ)の奥村美生さんが2023年3月2日〜4日に開催された「情報処理学会 第85回全国大会~ダイバーシティと情報処理~」で学生奨励賞を受賞しました.学生奨励賞は,学生セッションで発表された論文の中から優秀な論文や発表に対して贈られるものです.

弱教師あり学習モデルに対する転移学習を用いた動画中のイヌの情動認識手法に関する検討
○奥村美生,丸野由希(京都女子大),久保孝富,浦優輝(奈良先端大),吉村愛琉,永澤美保(麻布大学)

奥村さんのコメント
 この度は私が目標としてきた学生奨励賞を受賞することができて本当に嬉しいです.授賞式で私の名前が呼ばれた時の光景を今でも鮮明に覚えています.この賞を受賞できたのは,今まで丁寧に指導していただきました先生方のおかげだと思っております.研究活動では様々な挑戦ができて楽しく,充実した学生生活を送ることができました.今後も,目標を高く持ち何事にも挑戦する姿勢を忘れず,頑張っていきたいと思います.

奥村さんから後輩へのメッセージ
 様々なチャレンジをする機会の中で,学会発表は自分の研究に対して質問や意見をいただくことができます.新たな考えを発見することができるので,学会発表という経験はとても貴重だと思います.ぜひ機会があればチャレンジしてみてください.研究においては,自分の決めた目標に向かってとことんやってみることが大切だと思います.

指導教員のコメント
 奥村さん,受賞おめでとうございます.大学院生の研究発表もあった中,学部4年生で学生奨励賞を受賞できたのは,奥村さんの研究に対する熱意や日々の努力があってこそだと思います.これからも「らしさをつよさに未来をひらく」本学の卒業生として,誇りを持って挑戦し続けてください.奥村さんのご活躍を心より応援しております.

卒業式の日に研究室で撮影(左:奥村さん、右:指導教員)
学生奨励賞の賞状と副賞の楯


城戸ゼミ京都フィールドワーク(3)

 昼食後、バス組とタクシー組で分かれて京セラ美術館へ行ってきました。

京セラ美術館

 京セラ美術館のコレクションルームに入る前に「大学のまち京都・学生のまち京都」という公式アプリKYO-DENTをみんなでダウンロードをして通常700円のところ100円で観覧することに成功しました。
 観覧部屋に入る前に、受付前にあるインスタ映えする螺旋階段で写真会をしました。みんな写真の通り必死でモデルを撮影していました。

場所:京セラ美術館中央にある案内所の横

 コレクションルームに入って計74点の展示物を見ました。どの作品も繊細で感動するものでした。展示物の一つである「千種掃雲<ねざめ>」という作品がありその格好の真似をしました画像がこちらになります。

この日の京都の気温はなんと38度!!

 みんな京セラ美術館についた途端、涼んでいました。非常に暑い一日でした。
 コレクションルームの中盤にあったレトロでおしゃれな階段で初めてゼミメンバーで集合写真を撮りました。
 ちなみに城戸先生も写っています(^^♪

場所:京セラ美術館中央部にある螺旋階段

城戸ゼミ京都フィールドワーク(2)

 河合神社、下鴨神社を訪れた後の昼食はSECOND HOUSEさんにお邪魔しました。
 下鴨神社近くにあるバス停『下鴨神社前』から乗車し『河原町今出川』で降り、徒歩1分でSECOND HOUSEに到着。レンガや木造の素敵な外装です。
 中に入ると壁に黒板が飾られており、本日のオススメメニューが書かれていました。

 SECOND HOUSEさんは特にパスタのメニューが豊富♡
 パスタ以外にもキッシュやピザなどもあり、なかなか選びきれず…かなり迷いながら注文しました。どれもボリューム満点でとても美味しかったです!

 デザートも大充実!
 入り口付近のショーケースにはケーキや焼き菓子がたくさんあり、目移り必至。
私はパスタのボリュームでデザートまで辿り着けませんでしたが、
コロナが落ち着いたら友達同士でいろいろな種類をシェアなんかもいいですね♪

 暑いこの時期の京都にぴったりなかき氷もありました。写真は抹茶味。
 キャラメルなどの変わり種もありましたよ!余談ですが、伝票の裏が100ドル札!こんなところにまでおしゃれな気遣いが…

 出町柳方面にお出かけの際には、ランチに、ディナーにいかがでしょうか?ボリューム・味ともにおすすめです!

文責:原田・東薗・樋口・日野・福永

城戸ゼミ京都フィールドワーク(1)

 7月2日に城戸ゼミ(基礎演習Ⅰ)は京都ツアーに出掛けました。担当グループごとにその時の様子をまとめたので、以下現社ブログに掲載します。コロナ禍ですが、屋外でもマスク着用、昼食中も黙食に心がけるなど感染対策を考えながらフィールドワークを実施しました。対面での授業も少なく、友達と触れ合う機会が限られる中で、ゼミ生同士の中が少しでも深まってくれればと思います。また、フィールドワークの行き先を調べ実際訪問することで、自分たちが学ぶ街である京都について少し雰囲気を感じることができたのではないでしょうか。

(以上、文責:城戸)

 行先は担当グループごとにプレゼンを行い決定した
・下鴨神社
・セカンドハウス
・京セラ美術館
の3つです。

 この日は快晴。最高気温は38.6℃。まるで真夏のような暑さでした。
 午前11時に下鴨神社御影通り参道入り口に集合し、ツアーがスタートしました。

 まず訪れたのは下鴨神社と下鴨神社の摂社の河合神社です。下鴨神社は京都市を南北に流れる鴨川の中流域にあります。市バス「下鴨神社前」下車すぐ、または京阪「出町柳駅」より徒歩12分で行くことができます。下鴨神社の御利益は厄除・子宝・安産・子育・交通安全。河合神社の御利益は美麗・安産・子育・縁結び。女性にうれしい御利益やかわいい絵馬・おみくじがあり、人気の神社です。

 糺の森を歩きながら河合神社を目指しました。糺の森は、樹齢6百年から2百年の大きな木々が並んでいました。木漏れ日が幻想的で美しい場所です。

↑糺の森参道

 しばらく歩くと河合神社に着きました。自分で化粧をする絵馬は、その人の個性が出て可愛かったです。

↑河合神社

 大きな南口鳥居を抜けて少し歩くと、相生社がありました。ここは、縁結びで有名な映えスポットです。

↑相生社

 最後に下鴨神社に向かいました。奥にあるお社には十二支の神が祀られていて、自分の干支のお社を参拝すると良いとされています。そしてここでは、たくさんのかわいいお守りや水占いなどがあり、皆で楽しめました。

↑下鴨神社

 水占いは下鴨神社ならではの珍しい占いとして特に有名です。実際に自分で好きな紙を選び、水に浸すことでじわじわと文字が浮かんでくる様子を見て楽しむことが出来ました。

↑水占い

 限られた時間の中ではありましたが、思い思いに楽しむことができました。
 皆さんもぜひ、女性にうれしい下鴨神社・河合神社に参拝してみてください。

文責:林、日口、福田、福永、福本、藤村

京都国立博物館見学レポート

 6月28日(火)に基礎演習Ⅰ奥井クラスで大学の近くにある京都国立博物館に見学に行きました。受講生の稲葉さんからの報告レポートです。

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 京都女子大学から女坂を下って約10分。気温が37度と猛暑日の中、日傘をさし、ハンディファンを手に京都国立博物館にやってきました。京都女子大学の学生証を見せるとなんと無料で入ることが出来るんです!まず、南門入口を入ると右手にきれいで大きいレンガ造りの建物に圧倒されました。これは誰もが足を止めてしまうはず。この「明治古都館」は歴史を感じる重厚感と美しさがあり、重要文化財にも指定されています。

 次に正面に目をやると新館の「平成知新館」が目に入ります。中に入ると第一声は「涼しい~」。最近は猛暑日が続いていたので建物の中は本当に気持ちが良い!ガラス窓からの眺めもとても美しいです。

 私が訪れた日は特集展示として『新発見!蕉村の「奥の細道図巻」』が開催されていました。「奥の細道」という自分が知っている作品が展示されていてなんだか嬉しくなりました。3階まであり、陶器や埴輪などが展示されていました。1つ1つの作品を説明文から展示品までじっくりゆっくり見ることが出来ました。展示されている中で食器の展示があったのですが、各場面に合わせて食器を変えていたり、現在でもお店などで見かける模様の食器などがあったり、とても面白かったです。

 館内にはお土産屋さんもありここでしか手に入らない文具やマグネットがありました。館内を出ると南門付近に「前田珈琲」があり、ふわふわの焼き玉子サンドなどサンドイッチなどを食べることが出来るそうです。ぜひ、博物館の後に行ってみてはいかがでしょうか。

IT業界&職種研究セミナー

こんにちは,宮下です.少し報告が遅くなってしまいましたが,表記のセミナーを7月6日(水)午後に開催しました.対象は情報システム専攻の学生さんであれば学年を問わず,としました.当日は2回生からM1まで幅広く20人ほどの学生さんが参加しました.対する参加企業はなんと6社もあり,大いに盛り上がりました.

このセミナーはIT業界とそこにある職種について学生さんに知ってもらおうという目的で実施しました.まず当日来ていただく人の職種について参加企業と相談し,エンジニアやセールスなど6種類の職種を決めました.学生さんには聞いたことのない職種の人もいると思い,事前学習としてそれらの職種についてググってもらい,どんな仕事をしている人なのか少し調べてから参加してもらいました.

当日は,まずIT業界全体の概要をNICT(情報通信研究機構)有留由記さんに説明していただき,その後は6つのチームに分かれてそれぞれひとつの企業からその企業の説明や出席している人の職種についての説明を聞き,質問などしながら情報をまとめるという作業を実施しました.このセミナーは他の大学や専門学校等でも実施されているのだそうですが,その際は模造紙(懐かしいですね)を使って情報をまとめているのだそうです.アナログな作業を通じた情報共有が良いとのことで,今回は壁面がすべてホワイトボードになっているS207教室の強みを活かしてホワイトボードに情報をまとめることにしました.各チームで協力して,ペンの色や字の大きさなどに変化をつけたり,イラストなども交えて,普段のPowerPointでのスライド作成とは異なる作業を楽しんでいました.

最後に,各チーム5分ずつくらいのライトニングトークで,まとめた情報を発表してもらいました.どのチームも的確に情報を捉え,わかりやすくまとめていました.1チームにつき1つの職種について調査したことが,最後の発表会で全員に共有されました.これからの生活にこれらの知識を活かしていってもらえればと思いますし,特に就職活動などには役立つのではないかと期待しています.どの学生さんもとても楽しそうにしていたのが印象的でした.

今回お声がけいただいた有留さん,参加してくださった企業6社の皆さま,ありがとうございました.

環境政策ゼミ卒業論文まとめブログ(1):
容量市場と地域新電力
経営の持続性を図るために地域新電力ができることは?

2022年3月 中西望実 (2021年度卒業生)

 こんにちは。卒業生の中西です。今回は現代社会学部・環境政策ゼミでまとめた卒論の内容をかいつまんでご紹介致します。少し専門的な内容ですが、環境政策ゼミは「こんなこともやっているんだ」ということをご理解頂く上でご活用頂ければ幸いです。(なお、途中ところどころ指導教官の諏訪先生が加筆した部分があります。)

 2016 年 4 月の電力の小売全面自由化を契機に、新しく電力の小売り事業を始めた小売電力事業者(新電力)が現在日本には約700あります。これら新電力の中には、地域新電力と呼ばれるものが約80あります。実はこの地域新電力の多くは、地域内で電力(再生可能エネルギー利用にも積極的です)を発電・消費し、地域の需要家が支払っている電力料金を地域内で循環させることを目指し、電力販売で得た収益を地域の課題解決に向けて活用することで、地域に密着したサービスの提供(例えば、地域の子育てやシニアサポート)や地域の課題解決、地域の活性化などに頑張っているところが少なくありません(図1)。

図1 地域新電力の一般的意義             (出典 環境ビジネスオンライン 2019)

 ところが、これら地域新電力をとりまくビジネス環境は厳しい面もあります。2022年2月のロシアのウクライナ侵攻への対抗策を受けたエネルギー価格の上昇など、国際的な影響もありますが、加えて日本国内の方針によって経費を計上しなければならない局面も出てきているのです。

 例えば、将来の電力の供給力を確保するため、電力の供給力を取引する容量市場というものが2020年度に開設されました。容量市場とは、電力の供給力を取引している市場のひとつで、国全体で必要な供給力(発電能力)を確保するため、小売電気事業者が負担する容量拠出金を発電事業者に渡す制度です。発電所の建設・運営に必要な固定費の一部を小売り電気事業者が負担することで、発電事業者が発電所を維持できるようにするのが目的です(山根, 2020)。

 供給力の確保というのはどういうことかというと、まず電力の小売全面自由化以前は、大手の電力会社(例:東京電力、関西電力等の旧一般電気事業者)が、発電所を建設・運転し、電力需要を満たす義務を負っていたのですが、自由化後はそういう義務がなくなりました。こうなると、いざというときの供給力を確保するための費用は誰が負担するのか、という議論が生まれます。なぜなら、現在のエネルギー需給のバランスを考えるとどうしてもバックアップ電源が一定程度必要な面もあります。予備電源は多くの場合、従来型の火力発電である場合が多いのですが、(少なくともウクライナ危機が生じる前の段階までは)脱火力発電の動きが(一応)ありました。ただ、火力発電に投資したくない、という市場の判断が今後進むと、必要最低限の予備電源も確保できなくなる懸念が生じるのではないかというわけで、一定の発電容量を確保できるように、規模にかかわらず小売電気事業者はみな(つまり地域新電力もふくめて)一定の発電容量を予備的に確保できるように支出金(「容量支出金」)を支払いなさい、という義務を負うことになったのです。

 ちなみに、日本には電力取引に関する「市場」が複数あります。図2は主なものを示していますが、聞きなれない「市場」がたくさんあるな、という印象を持たれる方も多いのではないでしょうか。「発電された電力」を仕入れるための市場(卸電力市場)だけでなく、困ったとき(短い時間にちょっと電力が足りない状況)に頼ることを想定した市場(調整力市場)、CO2の発生を抑える電源を活用した価値を取引する市場(非化石価値取引市場)などが次々と作られているのですが、容量市場はそのひとつということになります。
 少し強引ですが「ごはんを作るお母さん目線」で例えると、通常の買い物(仕入れ)はスーパー(卸市場)で行うけれど、万が一買い物が不足する場合に、近所のコンビニ(需給調整市場)で緊急的に仕入れをする(ちょっと価格は高くなるけど、しょうがない…)、なおこのお母さんは意識が高い方で、普段から無農薬の食材を買っています(非化石価値取引市場)。これに加えて、最近行政から、「最近、農家さんが減ってきて食材を作る方が減っています。無農薬であろうがなかろうが食材が全部なくなると困るでしょ、普通の農家さんを支援する枠組み(容量市場)に参加して、決まったお金を払いなさい」といわれた、といった感じでしょうか。

図2 日本の主な電力取引市場             (出典 電力広域的運営推進委員会 2021a)

 なお、容量支出金は、オークション方式で決められます。つまり、関係者が入札した金額で決まるのですが、オークションなので、高い入札をした企業があると、そこで金額が決定(約定)します。ここで注意しなければならないのは、日本の容量市場ではシングルプライス方式が採られている点です。つまり、容量市場の場合、高値で約定した場合、高値で入札しなかった事業者も「高値しばり」になって、みな約定した「高値」を支払わなければならないのです(仮にマルチプライスだったら、複数の約定が可能になるのでしょう)。ゴッホの絵画のオークションでしたら、お金持ちが何億円か支払って終了、ですが、必ずしもお金持ちではない事業者(こんな言い方ですみません)も道連れになる、というわけです。

 案の定、2020 年に行われた容量市場での約定価格が市場関係者の予想よりも高く、容量拠出金の負担が新電力・地域新電力の経営上の課題になっています。例えば、2020 年 7 月に開催された第1回オークションの結果、容量拠出金の負担額は 100 億円以上の新電力が 7.4%、10 億円以上の新電力が 33.8%、5億円以上の新電力が 7.4%となりました。容量市場への支払額が高いことにより利益が消え、事業継続が危ぶまれる新電力は 75%であり、事業を縮小する新電力は 12.5%とみられています(山根2020)。 このように、容量拠出金の負担が新電力・地域新電力の事業継続に大きな影響を与えているのです。なお、容量市場そのものにも、「既存の電源を可能な限り稼働させることを支援する」仕組みになってしまっているのではないかといった批判があります(松久保2019)

図3 容量市場創設の背景           (出典 電力広域的運営推進委員会 2021a)

 では、地域新電力は、容量市場拠出金負担に対してどのような戦略を取ろうとしているのでしょうか?卒業研究としてヒアリング調査を行った結果をご紹介します。

ヒアリング調査

 私の卒業研究では、容量市場の拠出金負担額が地域新電力に対して大きな影響を与えている状況を鑑み、事業を継続していく上で有効な対策について代表的な地域新電力9社へのヒアリングを実施しました。
 ヒアリング項目は①容量拠出金を負担しつつ経営を安定化するための戦略は何か(どうやって対策するの?)、および②容量拠出金負担を受けた電力料金の見直しの可能性について(電力料金値上げするの?)の2点です。

 ヒアリングの結果は以下の通りです。
① 容量拠出金を負担しつつ経営を安定化するための戦略は何か?
 これついては、多くの地域新電力が拠出金負担額の算出に使用される「夏季ピークと 冬季ピークの電力消費量」を抑制することで容量拠出金の負担額削減を試みていることがわかりました。
 容量市場拠出金は夏季ピーク(7 月 8 月 9 月)の需要実績と冬季ピーク(12 月 1月 2 月)の 需要実績を基準とした需要比率によって算出される(電力広域的推進機関 2021b)ので、算出に使用される夏季ピークと冬季ピークの電力消費量を抑制することは、容量拠出金の負担額を減らすことに繋がるというわけです。
 また、需要家との契約方法を小売りではなく、オンサイト PPA の契約を結ぶことで容量拠出金を支払わずに長期的な顧客の獲得を目指していることもわかりました。オンサイト PPA (PPAとはPower Purchase Agreement:電力販売契約の意味です)とは(地域新電力を含む)電気事業者が需要家の敷地内に太陽光発電などの発電設備を事業者の費用により設置し、所有、維持管理した上で、発電設備から発電された電力を需要家に供給する仕組みです(環境省 2021)。事業者が供給力を確保している、ということから、オンサイト PPA による電力販売は容量拠出金の支払い対象外となるのです。

② 容量拠出金負担を受けた電力料金の見直しの可能性
 電力料金の見直しについては、容量市場拠出金は新電力にとって負担が大きいものの、電力料金への反映は他社が値上げを行わない限り困難なことが明らかになりました。

表1 ヒアリング調査の結果

事例/容量拠出金負担戦略電力消費削減オンサイトPPAその他
A社蓄電池の活用
B社電源調達の工夫
C社蓄電池の活用
D社電力消費の平準化
E社容量市場に関心がある中小企業と協力
F社
G社電力消費の平準化
H社電力消費の平準化
I社電力供給以外の価値を提供
(ヒアリングをもとに筆者作成)

 ただし、ウクライナ情勢を受け、エネルギー価格が近年稀にみる上昇を見せる局面では、地域新電力だけでなく、新電力全般においても値上げ以外選択肢がない場合もあり、今後の経営判断はマーケット全体として流動的です。一方、再生可能エネルギーの多くは、燃料価格の高騰に左右されにくいので、これをしっかりと供給できる体制を整えていくことも必要でしょう。

今後の展望

 地域新電力は容量拠出金対策として、ピーク時の電力消費削減とオンサイトPPAの活用を実施もしくは検討していることがわかりました。ただし、オンサイトPPAの普及や蓄電池を活用したピーク時の電力消費削減においてはいくつかの課題が存在します。例えば、地域新電力の主要な電力供給先である公共施設などの高圧電源の場合、系統制約が存在することは地域新電力がオンサイトPPA活用する上での課題となっています。また、蓄電池導入の場合は、災害時の電力供給に活用できることから導入が検討されていますが、コスト回収が課題です。今後地域新電力が経営を続けるために、容量市場制度の見直しやオンサイトPPAや蓄電池の普及に向けた政策が必要であると考えられます。

参考文献

環境省(2021)「初期投資0での自己消費型太陽光発電設備の導入について~オンサイトPPAとリース~」
https://www.env.go.jp/earth/kankyosho_pr_jikashohitaiyoko.pdf
(2022年2月27日アクセス)

環境ビジネスオンライン (2019) 地方創生へ向け再エネを有効活用し地域新電力を実現 ― シンポジウムレポート ―
https://www.kankyo-business.jp/column/021735.phPPAge=3

資源エネルギー庁(2020)「容量市場について」
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/system_kouchiku/007/007_09.pdf
(2022年2月27日アクセス)

電力広域的運営推進委員会(2021a)「容量市場とは」
https://www.occto.or.jp/capacity-market/shikumi/capacity-market.html
(2022年2月27日アクセス)

電力広域的運営推進委員会(2021b)「容量拠出金について」
https://www.occto.or.jp/capacity-market/kouri/kyoshutsukin.html
(2022年2月27日アクセス)

松久保肇(2019)「容量市場 その概要と問題点」原子力資料情報室 https://cnic.jp/8457

山根小雪(2020)「新電力の75%が『容量市場で事業継続が危ぶまれる』」
https://project.nikkeibp.co.jp/energy/atcl/19/feature/00001/00034/?P=1
(2022年2月27日アクセス)